モバイルゲームで成功しなかった
カプコンはそうした中で(モバイルゲームに成功しなかったという点も理由ではあるが)、2011年に1500人だった開発人員を10年かけて2500人体制にする方針を進めた。開発施設の増強やモーションキャプチャースタジオなどへの投資も惜しまなかった。
2010年代前半は家庭用ゲームが不調で、それこそ「プレイステーション4」(2013)や「Nintendo Switch」(2017)が“最後の家庭用ゲーム”とも言われる時代だった。
もはやゲームはPCとモバイルだけになるのではないか、とまことしやかに語られる中で、カプコンは虎視眈々と開発力を磨き続けてきた。
そうした試みが株式市場から評価を受け、2020年ごろから時価総額が急騰している(図表3を参照)。
もともと売上高の半分以上が海外と、特に北米での人気が高かったカプコン作品だが、2010年代に入って海外比率は上昇。もはや8割が海外での売り上げとなっている。
デジタル販売の比率もこの10年で2割から9割となった。量販店などに並ぶパッケージ作品に対して、オンラインショップでダウンロードするだけのデジタル販売は1本あたりの利益が高く、ゲーム会社としての収益性も非常によい。
家庭用ゲームの売上本数も伸びている。2014年に総販売本数は1300万本だったが、2022年には4170万本と3倍以上に増えている。
売れ筋は最新作でなくていい
この数年のゲーム販売において、特別な兆候ともいえるのが「旧作比率」である。その年に出た新作でなくても、過去に販売された旧作がブランドとなって売れ続ける傾向が出てきている。
ロックダウンで親子が一緒にゲームをする習慣が増え、どちらも知っている旧作をデジタルで購入するといった事例が増えたのだ。
たとえば、『バイオハザード 7 レジデントイービル』(2016年)の初年度の販売本数350万本だったが、その後7年間売れ続けて今や累計販売本数は1200万本である(図表4を参照)。
『モンスターハンターライズ』(2021)は初年度の480万本からほとんど落ちることなく売れ続け、現在の累計販売本数は1270万本となっている。
そして『モンスターハンター:ワールド』(2017)は、すでに新シリーズが出ているにもかかわらず、販売開始から6年間にわたって、毎年数十万本単位で売れ続けている。
これはかつてのゲーム業界では見られなかった事態である。現在、動画配信や音楽ストリーミングの世界では「旧譜が売れ続ける」という類似事例が起こっている。今後クラウド化やストリーミング化が進むゲーム業界においても、旧作比率の高まりは続くだろう。