父の病死で弱る母につけ込んだエホバの証人

関口さんは、母親がエホバの証人に入信したのをきっかけに自身も入信した宗教2世だ。母親が変わっていくのを目の当たりにしながら、葛藤し、自分自身は宗教を拒み、20歳の時に排斥(エホバの証人から排除、追放されること)されるに至る。

母親の入信のきっかけは、父親の病死だった。

「父が、僕が小学校1年生の入学式の時に結核で死んだんですけども、その後2年くらいたって、母が相変わらず憔悴しょうすいしきっているところに、エホバの人が、家庭訪問に来て。それで持っていかれたという感じです。頻繁に教会に通うようになって。父の死を知って来たのかはわからないですけど、知っていたのならつけ込まれましたね」

関口さんも教会や訪問販売に連れて行かれるようになり、やがて入信。しかし、心は徐々に離れていくことになる。

撮影=門間新弥
関口誠人さん

デクレッシェンドのように信仰心が引いていった

「音楽で言う、デクレッシェンド――徐々に離れていったという感じなんですけど、それまでは完全に洗脳されていましたね。反抗期までは、かなり忠実に一生懸命母親と集会に通っていました。将来、アルマゲドンが来るとか、死んだ人が復活するとか本気で信じていましたし」

母親の影響は大きく、中学1年生の時にバプテスマ(洗礼)を受けた。だが、教団の教えと学校の同級生との価値観の違いから徐々に不信感が芽生え始めた。そして、ある決定的な出来事が、脱会のきっかけになった。

「17歳の時にタバコを理由にエホバの証人を排斥になったんです。でも、正直いって、これでようやく解放されるという安堵あんどの気持ちのほうが大きかったですね」

エホバの証人は喫煙を禁じている。

それは、もしかしてわざとだったのだろうか。

「僕、中学の時、学校でいじめられていたんですよ。理由がエホバで勧誘の家庭訪問の活動をしていることがうわさになっていて。それで、ヤンキーと仲良くなればいじめられないんじゃないかと思って近づいて仲良くなったんですね。本当はいかんのだけども、そうすると当然、タバコを吸ったりもするようになってしまった。習慣化して、17歳の時に他の信者に街で見つかって密告されてしまったんです」