シーインが勝っても、ユニクロが勝っても喜べない

日本人が現代中国を見る時は、どんなことを見聞きしても、最初は油断して見下します。前作で大きな反響を集めた熊本の「い草・畳表」の事例でも、国産農家と自治体は油断で大敗北を喫しました。同じパターンで、後に白物家電、パソコン、スマホもやられました。

自損型輸入の最古参業界の一つであるアパレルの分野で「日本人の完全排除」という究極の完成形を迎えた事態は、今後、どのような展開を見せるのでしょうか。今後、日本人の消費者が「これからは、コスパがユニクロ以上のシーインにしよう」と言ったら悲劇ですが、「シーインに対抗するため、ユニクロを応援しよう」と言ったら喜劇です。

そんななか、悲劇や喜劇ではなく、惨劇と呼ぶほかない未来が垣間見えてきそうな恐ろしい変化が、わが国が最大の強みとしてきた産業で発生しつつあります。

日本に蔓延する「コスパ病」と「自損型輸入」

ここで一度、私の主張と提案をシンプルに整理してみます。

現在の日本では、国産企業が良い製品を適正価格で製造、販売しても、すぐに輸入業者が海外で安価な模倣品を作って安売りを始めるので、国産企業も値下げを迫られます。だから、いつまでたっても売価、売上、賃金が低く固定され続け、結果的に企業も個人も安物に頼って存続、生存を図るほかなくなるという悪循環が、30年近く、惰性的に続いています。

ところがわが国の消費者は、自分を限りなく貧乏に、そして不幸にしていく商品を「コスパ最強」と歓迎し、ユーチューブやSNSで連日、情報を拡散し、購入し続けています。そして、消費者が求める安さを実現するため、安さに屈した企業が続々と日本の貴重な財産である技術、設備、機械、ノウハウを海外に持ち込んで、日本市場でのシェア争いと価格競争に明け暮れ、業界と産地全体を経済的自殺の道連れに巻き込んできました。

私は、日本特有のこの病的な貿易構造と消費活動に警鐘を鳴らすため、前作を『コスパ病 貿易の現場から見えてきた「無視されてきた事実」』と名付け、そして、このように結果的に自国に損失を与え、日本の衰退につながる輸入を正確に認識し、理解するため、通常輸入、開発輸入とは区別して「自損型輸入」と名付けました。