「男は一人では生きていけない」は本当だった

誤解しないでいただきたいのは、死別男女がもっとも長生きだからといって、「配偶者と死別すれば長生きできる」ということではありません。配偶者と死別するまで有配偶状態が継続した結果です。

また、女性の場合、有配偶がもっとも短命に見えますが、これも「結婚した状態だと女性は早死にする」のではなく、そもそも有配偶のまま死亡する女性の総数が少ないためです。大抵の妻は夫より長生きです。一般的に、多くの女性は有配偶のうちには死なず、死別女性として死亡するのですが、有配偶女性だけを抽出して死亡中央値を計算するとこういう結果になるだけです。

全体的な傾向としては、男性は死別も含み有配偶状態が長く続けば続くほど長生きの傾向があります。未婚男性の死亡も早いですが、離別男性も74.6歳と早い。これが「男は一人では生きていけない」といわれる所以ゆえんでしょう。反対に、未婚女性は84.6歳と、むしろ一人でいるほうが長生きのようです。

こうした配偶関係別の寿命の違いは、大きくは食生活など生活習慣によるものが大きいのですが、もうひとつ男性より女性のほうが孤独耐性が強いことも影響があるでしょう。

50歳以上の未婚男性は40年で23倍に

特に、男性の場合、会社や家族という所属が失われてしまうと途方に暮れてしまう人が多いものです。これは、男性がより社会の中で「どこかに所属している」という帰属意識に依存してしまう傾向があるからです。

また、男性は離婚率と自殺率が強い正の相関がある点も、家族という所属を失った喪失感と関係がないとは言えないでしょう(〈「離婚男性の自殺率が異常に高い」なぜ日本の男性は妻から捨てられると死を選んでしまうのか〉参照)。

そもそも50歳以上の未婚人口は激増しています。国勢調査によれば、1980年における50歳以上の未婚男性人口はわずか17万人程度でした。それが、2020年には、約391万人へと23倍にも増大しています。女性のそれも、1980年の41万人から2020年251万人へと増えていますが、6倍増に過ぎないので、いかにこの40年間で50歳以上の未婚男性人口が急増したかがわかると思います。

この男女合わせて642万人もの50歳以上未婚人口ですが、これはこれからのソロ社会化にむけて避けては通れない課題となるでしょう。いうなれば「身寄りなき人口増加問題」です。