「身寄りなき死」が続出する

同じ独身でも、婚歴有の死別や離別の場合は、子どもの家族など誰かしら身寄りのある人が多いと思われますが、生涯未婚であれば当然配偶者も子もいないし、本人が50歳を過ぎていれば親も鬼籍に入っていることも考えられ、さらに、昔ほど兄弟姉妹が多いわけではない環境の中で、まったく身寄りのない状態で死亡する可能性が高いということになります。

そもそも日本の福祉システムは、皆婚時代の流れを引きずり、家族がいる前提で作られています。家族がいないという生涯未婚者に対してはそのサポート体制がないといっても過言ではないでしょう。かつて互助機能を果たしていた地域のコミュニティも、一部の地方を除けば消滅しつつあります。血縁関係があったとしても、遠方に住む親戚との接点も希薄になっていれば、たとえ死亡したとしても、その引き取りを拒否されるケースも増えています。

さらに、身寄りのない未婚者は遺産の行方すら宙に浮いてしまいます。

最高裁判所によると、相続人不存在による相続財産が国庫に入った金額は約647億円(2021年度)にものぼるといいます。2001年度は約107億円だったので、20年で6倍増になっているわけです。これは未婚で身寄りがないがゆえに、老後の蓄えを気にして、節約した結果、生きているうちに使わずに亡くなってしまう場合もあるでしょうし、そもそも不動産を相続する相手もいないわけです。

「所属」のない高齢者に社会的役割が必要

前述した通り、今現在でも50歳以上の未婚人口は642万人もいます。もちろん、この全員が身寄りがないわけではありませんが、今後未婚人口がさらに増加していく中で「身寄りのない高齢ソロ」の対応は大きな課題となるでしょう。

「どうせ一人なんだから、死んだ後のことは知ったことではない」という考えの人もいるかもしれませんが、一方で「死んだ後、よそ様に迷惑をかけたくないが、どうすればいいかわからない」と悩む人も多いでしょう。

死後の憂いをなくすことで、かえって安心して生きられるという面もあります。

長野県南箕輪村では、行政と連携し、2019年度に「身寄りのない方のエンディングに関する研究会」を発足したという動きもあります。こうした視点の取り組みを各自治体も国も目を向けるべき時にきているのではないでしょうか。

死後のことだけではなく、「所属」のない身寄りなき高齢者にとっての今の社会的役割の付与も大事です。自分の子や孫がいなくても、血がつながっていなくても、果たせる社会的役割はあります。むしろ行政には、増え続ける高齢ソロの社会的役割を実感できる環境作り、お膳立てが必要です。

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