ひきこもりに効く栄養療法の開発が可能
また、ひきこもりの人は、血中のビリルビンの値が低く、脂質の代謝に関係する長鎖アシルカルニチンの値が高いことも判明しました。
これらの血液成分の変化にどのような意味があるのかについては、まだまだ研究が必要です。ひきこもって日光にあたらないために、二次的に起きてくる変化なのかもしれませんし、偏った栄養が原因かもしれません。しかし、血液成分のパターンをひきこもりの重症度と共にAIに学習させたところ、AIは血液成分の情報のみで、採血した人間がひきこもりであるか、またひきこもりである場合の重症度を高い精度で予測できるようになりました。
この結果から、ひきこもりの背景には共通した医学的・生物学的な変化が存在していると結論づけられそうです。
これまでひきこもりは「甘えているだけ」「怠けている」「人間的に弱い」など精神論の犠牲になることもあり、国家的な社会構造の問題にすり替えられてきた面もありますが、医学的にきちんと治療ができる疾患である可能性も捨てきれません。
研究者たちは今後、ひきこもりと血液成分の関係を調べていくことで、ひきこもりに効く栄養療法の開発が可能であると述べており、今後に大きな期待が持てます。
出典
①Setoyama D, et al. Blood metabolic signatures of hikikomori, pathological social withdrawal. Dialogues Clin Neurosci. 2022;23(1):14-28.