不動産頼みの経済運営は限界にきている
そこで、地方政府は資金調達のため“地方融資平台”と呼ばれる投資会社(政府系の企業)を設立し、信託会社や銀行などから借り入れを行った。リーマンショック後、共産党政権が投資の積み増しで経済成長を重視し、「不動産の価格は上昇する」という過剰な強気心理も高まった。その中、地方の融資平台向けの債権などに、「政府の保証がついている」との過信も広まった。
しかし、ここへきて「すべての高金利商品に保証がついているわけではない」と気づく投資家は急速に増えた。中融国際の運用する数十の信託商品でも支払いは滞った。中融国際の主要株主である中植企業集団の資金繰りが急速に悪化し、債務再編の恐れが高まっていることも明らかになった。現実に直面した投資家の一部は、監督当局である国家金融監督管理総局に介入を求めたと報じられた。
リーマンショック後、中国は世界的な超低金利環境の長期化期待、マンション価格の上昇期待を背景に投資を積み増し、高い経済成長を実現した。中融国際の事業運営の行き詰まりは、そうした経済運営が限界を迎えつつあることを示唆する。
習政権が方針を転換するとは考えづらい
足許、中国の不動産や固定資産の投資は減少している。家計は支出を削減して債務の返済を急ぎ、個人消費、新規の融資の伸びも鈍化気味だ。経済全体でバランスシート調整の圧力は強まった。
8月21日、景気下支えのために共産党政権は追加の利下げを発表した。また、習政権は地方政府の債券発行枠を拡大し、銀行や地方政府傘下企業の資金繰り支援を強化するよう指示した。
ただ、中融国際の状況を見る限り効果はあまり期待できない。まず、不良債権の処理によって雇用の喪失は増える。それは、一党独裁体制の長期化を目指す習近平政権にとって避けなければならない問題だろう。経済格差の拡大を抑えること、SNSを通した人々の結託を防ぐことなどを目的に、成長期待の高いIT先端分野では民間企業に対する締め付けも強まった。
短期間で、習政権が経済運営の方針を転換するとは考えづらい。むしろ、地方政府の債券発行枠を拡大して政府系企業などの資金繰り支援を強化しつつ、経済と社会への統制を強める可能性は高い。それで問題の根っこが解決できるとは考えにくい。当面、債務問題の深刻化は避けられそうにない。