キリンの発情期は1年じゅう、メスは2週間ごとに24時間発情

ご存じ、キリンをはじめとする哺乳類はメスの体内で卵とオスの精子が受精して受胎します。キリンが繁殖できる体に成長する(性成熟といいます)のは、動物園と野生でも違いますし、動物園の中でも個体差があるのですが、私が担当していた頃はだいたいオスで5歳、メスで4歳くらいと言われていました。性成熟したらいつでも繁殖できるというわけではなく、メスは発情している約24時間だけ交尾を受け入れます。キリンのメスは1年(発情期)を通して、約2週間ごと(発情周期)に約24時間(発情期間)の発情がくるのです。オスはメスの発情に反応するだけなので、発情という言葉は主にメスに対して使います。

受精したら交尾の必要がないので発情はきません。そして約450日(15カ月)の妊娠期間を経て出産を迎えるのです。

オスは常にメスの発情がどれくらい近いのかを気にしており、それを判断する行動が毎日見られます。メスのおしっこには発情を示す物質が含まれているので、それを舐めてフレーメンをするという行動です。

「おしっこを舐める?」「フレーメン?」、ご説明します。

まずフレーメンですが、これはキリンに限らず他の動物種でも見られる行動です。有名なのはネコやウマです。中でもウマのフレーメンは唇を開いて上下の歯がしっかり見える状態になるので、よく笑っていると言われますがそうではありません。キリンも少し似ていて、上唇をめくり上げて首を反らすように伸ばします(ちなみにキリンに上の前歯はありませんので歯茎が見えます)。

オスはメスのおしっこを毎日舐め、交尾できるかチェックする

そうすることで、鼻腔の奥にあるにおいを感じる器官(鋤鼻じょび器官、ヤコブソン器官)に、よりしっかりにおいが届くのです。それでオスはメスの発情がどの程度近付いているのかをチェックしているのです。しかも、メスがおしっこした時を狙って舐めに行くのではなく、オスがチェックするためにメスにおしっこを出させるのです。

まずオスがメスのお尻を口先で刺激します。するとメスがおしっこをするので、それを舐めてチェックするのです。これは毎日見られる行動なのですが、発情に近ければ近いほどチェックの回数は増えていきます。キリンでもおしっこは常にたっぷり出るものではありませんので、発情が近く何度も何度も短い間隔で促される時はさすがにもう出るおしっこがなくなります。それでもメスは絞り出すように数滴出しますが、もはや数滴すら出ていないように見えるときでもオスはフレーメンをするのです。

メスの尿を舐めるオスのキリン(写真提供=京都市動物園