政務官辞任、離党だけでは「不十分」が61%

そうした影響力を及ぼす立場にあった秋本氏が、国会質問という公的な場で、ある特定の私企業が有利になるとも解釈される政策上の審査基準の見直しを訴え、その後に企業側から多額の資金を提供されたとするならば、「国会議員の権限を使用した」疑惑があるとみて、東京地検特捜部は捜査に着手したと考えられる。

この事案に関しては、今後の捜査の進展を見守るしかないが、強制捜査当日の8月4日に岸田文雄首相が「大変遺憾」と、特に言及しなければならない事態に発展するほど、岸田政権に与える影響は大きい。これは十分に国民の政治への信頼を失わしめるものであるからだ。

事件直後の8月11日から13日にかけて行われたNHKの電話世論調査によると、内閣支持率は「支持する」は前月よりも5ポイント下落し33%、「支持しない」は4ポイント増加し45%となり、昨年11月と同じ、過去最低の水準に下落した。この政権支持率に、秋本氏の事件の影響がなかったとは考えられない。

というのも、NHKは同じ世論調査の中で、秋本氏の事件についてもアンケートをとっている。秋本氏が外務政務官を辞任し自民党を離党したことに関して、「十分だ」という回答は25%しかなく、「不十分だ」という回答が61%にも上ったことは、国民はこの問題に関して厳しい見方を持っていることを表している。

世論調査中の8月11日に、当初は贈賄を否定していた日本風力開発の社長が、一転して贈賄容疑を認める意向を示したと報道されたことも影響したと考えられる。

議員にも政党にも「都合が良い解決法」

もちろん、その政権支持率の下落は、秋本氏の事件だけに起因するものではない。マイナンバーカードや保険証の廃止などの問題もあるが、この世論調査を見れば、秋本氏の事件が政権支持率の下落に影響を及ぼさなかったとは言えないだろう。

実に6割以上の人が、問題を提起された議員が政党を離党しただけでは「不十分である」とみていることは重い意味がある。政党を離党してしまえば、次の選挙では政党の公認が得られず、よほど強い支持がなければ再選は難しくなる。実質的な制裁を受けているといっても良い。

しかしながら、政党を離れてしまえば、議員側は政党から議員辞職などの圧力を受けなくてすむことになる。また、政党側も「すでに政党を離党した議員であるので、党としては現状として何もできない」という口実を得て、責任を回避することができる。

いわば、不祥事において議員が政党を離党するということは、議員にとっても政党にとっても「都合が良い解決法」であるという見方もある。

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