野菜たっぷりの食事は本当に健康的?

ただし、筋肉量を維持する、あるいは増やすには、運動だけでなく筋肉を増やせるだけの「余裕度」が体に必要です。私たちは、生きるために必要なエネルギーを食事から摂っています。しかしエネルギーの摂取量が生きるだけでギリギリの状態では、筋肉をつくるだけの「余裕度」がありません。特に昨今の粗食ブームによる栄養とエネルギーの不足は、若い女性だけでなく高齢者にも多く見られる心配事の一つです。

このことに気づいたのは、田舎暮らしの老夫婦を取り上げるテレビの特集番組を偶然見たときでした。山や畑で穫れた野菜たっぷりの食事を「健康的」と紹介していたのです。

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野菜を摂るのはいいことですが、彼らの食卓にはタンパク源となる食品はほとんどありません。また、ご飯の量もかなり少なくて、2人は見た目も非常に細く、スリムというより栄養失調のような印象を受けました。私は「こんな状態でも世間的には“細くて健康”というイメージなのか」「野菜ばかりの粗食は、果たして本当に健康的なのだろうか」としばし考えてしまいました。

体脂肪を減らし過ぎてはいけない

高齢者は、タンパク質を摂っても若者と同じようには消化・吸収されません。しかもある程度の体重がないと筋肉をつくる反応すら起きなくなります。これは、体脂肪がついていなかったりエネルギー摂取量が少なかったりすると、日常生活を送っているだけでエネルギーを使い果たしてしまうからです。

私の思う「健康体」のつくり方は、筋肉量を増やし毛細血管も増やして血流をよくすることです。全身の血流をしっかり増やすような活動をすれば、エネルギー消費量は上がります。そうすると血中の糖や脂質が消費されて血液の状態がよくなり、筋肉もついて健康的な体つきを維持できる。そんなふうに次々とメリットが得られるようになるのが理想です。

ここまで栄養不足の話をしてきましたが、「自分は太っている」と感じている人がいらしたら「筋肉をつける余裕度のある体である」と前向きにとらえてほしいと思います。体重のある人は日常生活が軽い筋トレのようなものなので、脂肪の下にはある程度の筋肉があるはずです。後はそれを動かすだけ。このようにポジティブに考え、血流を増やし血管を強くする運動に取り組んでいただけると、うれしく思います。