「たった一人」でも温かな、信頼できる人がいればいい
本当に大切にするべき相手と理想的な人間関係を構築することは、ストレスを軽減し、脳の機能や仕事のパフォーマンスを高め、人を健康に、幸福にします。
ハーバード大学には、1938年から80年以上(発表された研究では75年分のデータを検討)にわたり、「幸福な人生」について研究している研究者たちがいます。彼らはその間、次のような形で、約700人の被験者たちの追跡調査を行って人生を記録し、現在は2000人以上に及ぶ、被験者の子どもたちについての研究も行っています。
実施者:ヴェイラント(ハーバード大学)ら
方法:1938年時点でハーバード大学2回生だった者と、ボストンでもっとも貧しい地域に住む少年たち、計742人を対象に、インタビューやアンケートによって仕事や家庭生活、健康についての質問を継続的に行う。
結果:家族や友人、コミュニティとつながりがあり、質の良い、温かい人間関係の中で生きている人は、社会関係が薄い人よりも幸福かつ健康で、長生きしている。また、80代の仲の良い夫婦は、身体的な痛みが多くても、自分たちを幸福であるととらえ、良い人間関係を持たない人は、身体的・精神的な痛みの増長を感じていた。さらに、信頼できる相手がいる人の記憶は長持ちし、信頼できる人がいない人は、記憶力が早くに低下する傾向があった。
幸せに必要なのは「家柄、学歴、年収、老後資金」ではない
この研究の結果、人の幸福と健康を高めてくれるのは、家柄や学歴、職業、家の環境、年収や老後資金の有無などではなく、質の良い人間関係であることがわかりました。
しかも友人の数は関係なく、たった一人でも心から信頼できる相手がいる人、温かい人間関係の中で生きている人は、脳が健康に保たれ、心身の苦痛が和らぎ、より長生きします。
逆に、孤立感を覚えている人は、自分を周りよりも不幸だととらえ、中年期以降に健康を損なったり、脳の機能が衰えたりしがちで、孤立していない人に比べて寿命が短くなる傾向にあったのです。
ほかにも、「嫌な上司のもとで働く従業員は、好きな上司のもとで働く従業員に比べて、心臓発作や脳卒中で死ぬリスクが60%高くなる」「人間関係が悪い会社では、社員が高血圧や高コレステロール、糖尿病に悩む確率が20%増加する」といった報告もあります。
つきあう友人の状況でも「幸福度」は変わる
では、あなたにとって本当に大切にするべき相手とはどのような人であり、理想的な人間関係とはどのようなものなのでしょうか。
何よりも大事なのは、「ポジティブな人、信頼できる人と共に時間を過ごすこと」です。