誰もが無意識に「引き出し」を持っている

これは何も特別なことではない。すでに誰もが意識せず、頭の中にこうした「引き出し」を持っているはずだからだ。

もしあなたが「旅行が趣味」で「ワイン好き」なら、あなたの頭の中にはすでに「旅行」「ワイン」という引き出しがあるはずだ。そして、誰かとの会話の中でお勧めの旅行先の話が出たり、テレビでワインを紹介していたら、無意識のうちにそれぞれの引き出しにその情報をしまっている、と考えることができる。

これらの「引き出し」に入れた旅行先やワインの情報は、もちろん忘れてしまうこともあるだろうが、関心のない分野の情報に比べ、確実に記憶に残っているはずだし、折に触れて引き出すことも容易だろう。

つまり、それを意識化したものが、この「20の引き出し」なのだ。

「20」という数には別に意味はない。私にとってちょうどいい数が20くらいというだけで、人によっては多すぎるという人も、これでは足りないという人もいるだろう。

大事なのは、自分の頭の中にはどんな引き出しがあるのかを、一度リストアップしてみることだ。今、自分が何に関心を持っているのか、何を目指しているのかが一目瞭然となる。いわば「脳内知の形式知化」である。

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情報が自然と飛び込んでくる

この引き出しを持つことのメリットはいろいろあるが、まずは、先ほどの旅行やワインの例のように、引き出しを意識することで、頭の中に情報が定着しやすくなる。

優れたアイデアを「スパーク」させるには、とりあえず面白そうだと思った情報を頭の中で泳がせ、熟成させるべきというのが、私の持論だ。だが、単に「面白い情報」というだけでは、記憶に残りにくいのも事実。「この引き出しと関連した面白い情報があったな」というほうが、記憶への定着率が格段に高まる。

また、情報に対する感度が鋭くなるのもメリットだ。漠然と「何か情報はないかな」と探したところでろくな情報は集まらない。「どんなアウトプットのために、どんな情報が必要か」がわかっていればこそ、最短で必要な情報が集まる。

それと同じで、自分がどんな分野に関心を持っているかがわかっていれば、情報に対するアンテナの感度も上がる。すると、必要な情報が次々に飛び込んでくるのだ。

例えば、自分の中に「人材育成」という引き出しがあることを意識していると、単なる企業の成功事例が、実は人材育成に関する重大なヒントになっていることに気づいたりする。そうしたら、その事例を自分の「人材育成」の引き出しにしまう、というわけだ。