背中がゆるむとストレスが減る
筋肉には、力を入れているときに固くなり、力を抜いたときに柔らかくなるという性質があります。筋肉は、ゆるんだり縮んだりすることで、ポンプのような働きをして、血液やリンパ液を流しています。細胞のすみずみまで酸素や栄養を届けたり、老廃物や余分な水分を回収したりするのに、筋肉の動きはとても重要です。
ところが、体に力を込めて筋肉が緊張した状態が続くと、筋肉が弾力性やしなやかさを失ってしまいます。筋肉は一時的に「固い」状態から、常時「固まった」状態になります。
こうなると、自分ではリラックスしているつもりなのに、筋肉はゆるまず、固いままなのです。筋肉のポンプ作用が働かなくなると、血液やリンパ液の流れが阻害され、酸素や栄養の運搬・老廃物の排出が滞ります。こうして、疲れやすさやコリ、痛み、不快感などの不調が発生します。
心と体はつながっています。嫌いな人と会ったり、苦手な人と電話をしたり、人前に出てあがったりすると、無意識に人の筋肉は固くなります。イライラしたり、緊張したりすると、脳が戦闘モードになり、交感神経が優位になるため、筋肉も収縮反応を起こして固くなるのです。
一時的に固くなるのはよくあることです。緊張がゆるむと筋肉もゆるむので、問題ありません。ただ、ストレス状態が続くと、筋肉の緊張状態が慢性化し、そのまま固まってしまいます。
頑張りかたを間違えると心も体もクタクタになる
かくいう私もいわゆる“スポ根世代”で、「力いっぱいがんばることが良いことなんだ!」とずっと思い込んできました。ジムや姿勢改善のインストラクターからも、肩甲骨をグッと寄せて胸を張り、がんばって「良い姿勢」をキープするよう、繰り返し指導されてきました。
でも、人間にとって、力を入れ続けることは決して自然な状態ではありません。疲れる動作や姿勢は長続きしませんし、力を込めていることが原因で体に余計な負荷をかけ、不調を訴えている人も実際に多いのです。
とは言え、この思い込みはなかなかやっかいです。例えば「メールはすぐに返信するべきだ」「部屋はいつもきれいにしておかなければいけない」「自分が決めたことは最後まで守るべきだ」などという思い込みは、簡単に取っ払うことができるものではありません。人の性格やクセはそう簡単には変わりません。そこでおすすめしたいのが、体からアプローチすることです。
体と心は常に影響し合っています。背中をゆるめて背骨や骨格の歪みを正すことで、自律神経を整えることが可能なのです。つまり、背中をゆるめれば、思考の固さも自然にゆるまります。いろいろなことが許せる状態になると、心も体もびっくりするほどラクになります。こり固まった背中をとことんゆるめてあげることに目を向けてください。