「眠れない」という思い込みでさらに睡眠不足に

加えて、よく眠れない夜がたびたびあると、「今夜もまた眠れないのでは」という不安がさらに増大する。それがまたストレスとなり、コルチゾール値が上昇し、質のよい睡眠をとるのがますます難しくなる悪循環に陥る。体も脳も十分に回復できず、このような状態が長く続くと深刻な精神疾患につながる可能性がある。

だが、睡眠障害に悩む人を助ける方法はある。

たとえば、かかりつけの医師に睡眠専門医や研究所に紹介状を書いてもらい、睡眠の検査を受けるのもひとつだ。再び熟睡できるように、また睡眠との関係をよりリラックスしたものにするために行動療法の治療を受け、不安の問題に対処することもできる。

ちなみに、睡眠専門の研究室で検査を行うと、患者本人が感じているほど深刻な睡眠障害レベルでないと判明するケースも珍しくない。よく眠れていないという思い込みに取りつかれているだけの人もいるのだ。

自分自身や過去の経験、そのほかの要因が、睡眠や人生全般に対する否定的な態度につながっていることも多い。

途中で目が覚めても横になるだけでOK

高齢者の間にも、睡眠障害に悩まされていると感じて医者にかかる人が少なくない。検査してみると、年齢相応の睡眠がとれていて、むしろ必要とする睡眠量に対する認識が誤っていることもある。

年配の人はすでに脳が完全に発達していて、難易度の高い新たな情報を処理することも少なくなるため、それほど多くの睡眠を必要としないのだ。

しかし、量と質をともなった睡眠が実際にとれているか否かにかかわらず、睡眠に対するネガティブな思い込みに対してはなんらかの対応をとる必要がある。睡眠を敵としてではなく、味方ととらえることが大事なのだ。

クリスティアン・ベネディクト、ミンナ・トゥーンベリエル『熟睡者』(サンマーク出版)

夜中に目を覚ますと負の思考スパイラルに陥りがちだ。「目が覚めてしまった、いますぐ眠らねば」と考えてしまう。だが、何度も時計を確認し、翌朝どれほど疲れが溜まっているかと心配するようでは、ますます寝つけなくなる。

そんなときは、「最悪だ」と考える代わりに、「数時間は眠れたし、ただベッドで静かに横になっているだけでも休息の効果はあるはず」と自分に言い聞かせよう。

これは真実だ。暗い部屋で横になり、外部からの情報を避けるだけで、脳はリラックスできる。ベッドの中で、絶えず不安を感じる代わりに、ただ静けさを楽しむことができれば、休息の効果はより大きくなる。