やはりブルーライトは大敵
感情のバランスがとれていると感じるには、安定した「睡眠・覚醒リズム」と、タイミングのよい、とりわけコルチゾール値が上昇し、感情を相対化することが可能な「夜の後半におけるレム睡眠」が不可欠なように思われる。
実際いくつもの実験で、うつ病だけでなく双極性障害と不安定な睡眠・覚醒リズムの関連性も指摘されている。
たとえばノルウェーで行われた研究では、双極性障害の患者に10日間にわたりブルーライトをカットする特殊なメガネをかけてもらった。その結果は驚くべきものだった。メガネをかけることで得られた、憂鬱な気分を改善したり意欲を高めたりする効果は、セロトニン濃度を上昇させる抗うつ薬「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」(SSRI)の効果と遜色なかったのだ。
セロトニンは、憂鬱な気分を改善し、覚醒させる効果をもつ脳内の重要な情報伝達物質だ。
あまり知られていないが、秋冬の季節性うつ病に光療法を用いると、薬と同じように迅速な効果が現れることが多い。
そのため、なんらかの理由で抗うつ薬を服用できない患者には、光療法が適している。精神的に不安定だと感じる人は、ぜひ体内時計の微調整に取り組んでもらいたい。
日光をたっぷり浴びるか、日中に光療法を受け、夕方から夜にかけてはブルーライトを避けよう。
なぜ枕が変わると寝つけないのか
睡眠不足は精神面の問題を引き起こす可能性がある。逆に、不安やストレスなどの心理的な負担が睡眠障害の引き金となることもある。そのような状況下では、コルチゾールとアドレナリンの値が、深い睡眠に入るのが難しいほどのレベルに上昇する。しかし、脳の再生にとくに重要なのが、まさにこの深い睡眠ステージなのだ。
枕が変わり眠れなかった経験をしたことはあるだろうか。慣れない場所では最初の晩は熟睡できず目を覚ましやすい。研究者たちはこれを、石器時代の名残の「ファーストナイト・エフェクト(第一夜効果)」ではないかと考えている。
当時は、未知の新たな場所で睡眠中に完全にリラックスし、熟睡することは、脳にとってリスクをともなう行為だった。そこで左脳が夜警の役割を担当した。右脳を休ませ、左脳はわずかに覚醒した状態を維持したのだ。警戒態勢を保ち、左目を開いたまま眠るようなものだ。慣れない場所にどのような危険が潜んでいるかは、誰にもわからないのだから。