「既婚者=成熟している」「シングル=未熟」という勝手な思い込み

意外に感じる人もいるかもしれないが、多くの欧米諸国で、シングルは成人の過半数を占めているにもかかわらず、おおいに汚名を着せられている。

ある研究では、1000人の大学生に「結婚している人たち」「シングルの人たち」に対して彼らがもっているイメージの特徴を挙げてもらった(※7)

シングルの人たちに比べて、結婚している人たちは、「成熟している」「幸せ」「正直」「愛情のある」などと表現されることが多かった。

一方、シングルの人たちは、「未熟」「不安定」「自己中心的」「不幸」「悲しい」「寂しい」など、ネガティブにみられていた。

この研究の次の部分では、同じ学生たちに、25歳と40歳という、2つの年齢における「結婚している人たち」と「シングルの人たち」のイメージを語ってもらった。その結果、シングルの人たちのネガティブなイメージは、年齢の高い人たちに対しては、より強くなっていることがわかった。

40歳のシングルの人たちは、「社会的に未熟」で、「適応できていない」、また、「嫉妬深い」と思われていた。さらに、シングルの人たちの生活環境は、結婚している人たちより劣っているとみなされている。

このことは、シングルであることは、規範から逸脱した存在だという現実を作り出している(※8)

このような社会的規範は、「独身差別(シングリズム)」(singlism)と呼ばれる、シングルの人たちへの差別のかたちであらわれることもあれば(※9)、「マトリマニア」(matrimania)という結婚熱のかたちであらわれることもある(※10)。この2つが組みあわされると、ますます、シングルを孤立させることになる。

シングルに対するネガティブなイメージは、彼らを望ましくないものとして描くさまざまなメディアや文章によって、さらに増大し、維持される(※11)

シングルの人たちは、このような差別、スティグマ化、社会全体に広がるステレオタイプを内在化していく。

また、離婚後、配偶者の死後にひとりで生きていこうと考えている人たち、あるいは単にシングルでいることを選択した人たちに対して与えられる、ネガティブな社会的、教育的、経済的、法的な含蓄をも内在化していく(※12)

シングルに対する差別の程度を試算するために、私は欧州社会調査(European Social Survey)を分析してみた。残念ながら、差別に関しては、独身差別についての直接的な設問はなかった。

しかし、民族、人種、言語、宗教、年齢、ジェンダー、障碍、国籍など、別のタイプの差別を除外することによって、独身差別が存在する程度を計測し、推定することができた。

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その結果、結婚していない人たちは、結婚している人たちと比べて、50%多く差別を経験していることがわかった。

最も憂慮すべきなのは、ほかの差別を受けているグループと異なり、シングルの人たちは、偏見から保護されないままでいるという事実だ。その原因は、シングルであることは、そもそも、保護するに値しないと考えられている場合が多いことにある。