男性一人で家計を支えることができなくなった

欧州全体では、60年代後半から80年代前半に変革が進みます。当時、欧州各国では産業が成熟化し、経済成長率が低下していました。そこに遅れて経済成長が始まった日本が猛烈な攻勢をかけます。

ちょうど、2010年前後に日本が、中国や韓国の猛追で苦境に陥っていたのと相通じるところがあるでしょう。

低成長で賃金上昇がストップした欧州諸国では、男性が一人で家計を支えることが難しくなり、家計補助としての女性労働が広がります。こんな経済不調を軸にした女性の社会進出のケースとして、オランダを例に挙げておきます。

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国も企業も働き手もメリットがある三方よしの働き方

オランダはダッチ・モデルという名で、独特な働き方をすることが有名です。短時間でも正社員となれて、完全な同一労働同一賃金で働ける仕組みです。これだと、夫婦ともに週休3日(勤務4日)で働いたとしても、二人合わせると週8日勤務のため、夫のみ5日働く場合よりも、世帯収入は1.6倍にもなります。

なぜこうした働き方となったか? 1980年代初頭、景気低迷に苦しんだオランダでは、労働者の権利を守りながら、雇用調整や労働移動がより行い易い仕組み作りについて、政労使で協議を重ねました。それが、労使の歴史的和解と呼ばれる「ワッセナー合意」として1982年に結実します。これにより、給与・待遇では全く見劣りしない短時間社員が誕生します。

当初、企業側は雇用者が増えると嫌がったのですが、じきに、「これは企業に有利」と気づきます。なぜなら、短時間正社員の組み合わせで土日も就業日とすれば、会社施設は週7日間フル稼働することができるからです。この方が効率的でしょう。

また、不況で誰かに自宅待機してもらう場合でも、フルタイマーの人よりも、短時間の人の組み合わせの方が、お互い痛みも少なくなります。

そして、この組み合わせだと、夫婦が別々に休みをとれば、最大週6日どちらかが家にいることもできる。これに潤沢な育児休暇や有給休暇を組み合わせれば、夫婦ともに育児も可能となります。結果どうなるか? 保育園などの社会インフラに国はあまりお金を使わなくてすむ。つまり、国・企業・働く人、三方一両得となるわけです。だから、この働き方が浸透し、女性も社会進出しました(図表1)。