日本人は不幸せ実感が高まると活力が一気に減退する

Well-beingと職務成果(アウトカム)との関係については、両者の間に正の相関があると報告する研究が心理学や経済学、経営学(財務領域)などで多数報告されています。筆者らの調査では、はたらく幸せ実感/不幸せ実感のスコアを高・中・低群の3つの集団に分け、アウトカムとして「個人のパフォーマンス」「創造性(クリエイティビティ)」「仕事への活力(ワーク・エンゲイジメント)」に与える影響を確認しました(図表2)。

この結果、幸せ実感とアウトカムの関係は他国と同傾向で正の相関が確認されました。しかし、注目すべきは不幸せ実感です。日本では、不幸せ実感が高まる(悪化する)とパフォーマンスも創造性も仕事への活力もすべてが大きく減退する傾向が確認されたのです。これは他の国や地域では見られない傾向です。つまり、幸せ実感が低い日本は、不幸せ実感も低いことで現状が維持されているためか、不幸せ実感が高まってしまうと堰を切ったようにパフォーマンスが崩れてしまうのです。日本の就業者は、仕事を通じて幸せが実感できることと共に、不幸せを感じすぎないように注意する必要がありそうです。

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「権威主義・責任回避」的な日本の組織文化

ここからは日本の実態を考察するため、特徴的だった外部要因を紹介します。まずは、「組織文化」の特徴とその影響です。組織文化はさまざまに類型化できますが、筆者らの分析で用いた尺度によると、日本は「権威主義・責任回避」的な特徴(上層部の決定にはとりあえず従う。社内では波風を立てないなど)が他国と比較して強く表れていました(図表3)。このような組織文化は、はたらく幸せ実感とは負の相関関係にあります。権威主義的な組織文化が色濃い組織で働く一般社員層は、はたらく幸せ実感が低い傾向にあります(図表4)。しかし、管理職層については逆で、1.25倍高い(相対的に良好な)傾向が見られました。

一方不幸せ実感は、一般層で2倍高く、管理職層は逆に1.5倍低い(相対的に良好な)差が生じていました。

つまり日本に多い「権威主義・責任回避」的な組織文化は、管理職にとっては居心地がいいけれども、一般社員層にとっては真逆なのです。組織文化の改革を先導するのが主に管理職層であることを考えれば、なかなか変革へのインセンティブが働きにくいことは想像に難くありません。