商品以外に受け入れられている理由
受け入れられているのは商品だけではない。
中国人が感動したのは接客スタイルだ。ユニクロの店舗に行けば、店内を歩き回って、自由に商品を見て回ることができる。これは私たち日本人にとってはごく当たり前のことだが、ユニクロが進出した2000年代には中国では斬新な接客スタイルだった。
当時の中国の接客は、追跡接客が基本だった。スタッフが来店客の後ろをついて歩き、いつ声をかけられてもすぐに応えられるようにする。現在でも高級店や個人経営店など、スタッフと顧客の距離が近い店舗では多用されている。ユニクロはそうした圧迫感からお客を解放した。
また、レジが混雑をしてきた時にはスタッフが出てきて、空いているレジへの誘導を行う。こうしたところにも「簡素、自由、快適」といった日系元素を感じている。
ユニクロ独特のO2O(Online to Offline)対応も好評だ。中国では2017年にスマートフォン決済が一気に広がり、モバイルオーダーやデリバリーが浸透をした。小売業ではECやD2C(直販EC)に対応をしない店舗は生き残っていけない状況となった。
ユニクロはO2Oへの対応も早かったが、店舗体験に軸足を置くO2Oを設計した。スマホで購入したユニクロ商品は、宅配も可能だが、店舗での受け取りも可能にした。店舗受け取りにすれば、その場で試着をしてサイズ交換をしたり、無料の裾上げサービスを利用することができる。店舗にきてもらえれば、新しい商品にであうチャンスも増える。
あえてビッグセールに乗らない
中国のユニクロも日本と同じようにシーズンがすぎた商品は値下げをする。さらに再値下げも行われる。期間限定の割引ではなく値下げであるということが大きなポイントだ。
中国では有名な11月11日の独身の日セールをはじめとして、6月18日、12月12日など年に数回のビッグセールがある。ECが主導するこのようなセールではさまざまな電子クーポン券が大量に配布され、それが消費につながっていた。
しかし、賢く買い物をするためには異なるクーポンをうまく組み合わせる必要があり、ちょっとした方程式を解くような難しさがあるのだ。これをゲーム感覚で楽しんでいる人もいるが、都市の若者を中心にクーポン疲れの感覚が広がっている。
さらには、断捨離感覚も広がり、セールに背を向けるミニマリストの若者も登場している。そのような感覚とユニクロのシンプルな「値下げ」がうまくマッチをした。店舗に行くたびに、新しい商品と新しい価格が発見できることから人気を博しているのだ。