良い思い出を残す努力をする
では、具体的にはどうやって縁のある人を大切にしたらいいのか。
僕がやっていることのひとつは思い出づくりです。
縁のある人たちが、できるだけ良い思い出を残せるような努力をしています。
たとえば、数年前に僕は自分のいちご畑に知り合いを招待しました。
シーズンになると、畑には真っ赤ないちごが実ります。0.5ヘクタールくらいの広さがあるから、家族だけではとても食べきれない量。
そこで知り合いに声をかけ、畑に来てもらい、いちご狩りを楽しんでもらったのです。「どうぞご家族もお友達も一緒に、誰でも自由に来てください」と言ったら総勢で400人くらいになってしまいました。
もちろんお金を取るわけではないから儲けにはなりません。しかし、400人のそれぞれに思い出を作ってあげることができました。ものやお金はすぐに消えてしまうけれど、思い出は400人の心のなかに何年も残ります。形あるものとは違う「いいもの」をあげることができたと思うのです。
そして、400人の誰かの心に残ったこの思い出が、いつかまた誰かとの縁を結んでくれるかもしれません。それは僕ではなく、僕の子どもたちと誰かを結ぶかもしれない。確証はないけれど、そんなことを考えるだけで僕の心はどこか温かくなるのです。
千葉真一さんの気遣いは格別だった
ところでこの400人のなかには、今は亡き俳優の千葉真一さんもいらっしゃいました。
千葉さんとはご縁があり、生前に何回かお会いしています。このときのいちご狩りだけでなく、バーベキューパーティなどもご一緒しました。
お会いするたびに感じたのは、千葉真一さんの周囲への気遣い。
特別扱いされることを拒んで、「どうか他の人たちと同じように対応してほしい」という思いが伝わってきました。いちごもバーベキューも、まずはどんどん人に勧めて自分は後で遠慮しながら食べるというふうな感じでした。
徹底した周囲への気遣いぶりに「名のある人なのに」と思ったものですが、逆にそういう人こそが「名のある人」になれるのでしょう。人との付き合い方のひとつを、僕は千葉さんから教わった気がしています。