取り残されずにやっていくのは十分可能
そして最後のポイントは日本企業、外国企業を含め、日本にはいまだにたくさんの半導体工場がある点です。
もちろん最先端プロセスを導入する半導体工場はありませんが、既存のプロセスを採用した半導体工場は数多くあります。
キオクシア、ソニーといった日本の半導体メーカーだけでなく、海外の半導体メーカーの工場が、日本の各地にあります。
半導体の製造にはきれいな水や空気が必要なこともあり、日本は比較的半導体を製造しやすい条件がそろっているのです。
つまり少なくともこの先5年から10年くらいの間に関しては、日本でも半導体が盛んに作られると考えられています。
この点に関しては日本が特別に世界から遅れているとはいえないでしょう。
このようなことから、日本の半導体は世界と比べて遅れているかという問いに対する答えは、遅れている部分もあり、かつてのような栄華を取り戻すのは難しいけれども、半導体市場から取り残されずにやっていくことは十分に可能、ということになります。
半導体を取り巻く状況を無視した状態で、一元的に「遅れている」「遅れていない」と論じるのは、少々短絡的ともいえます。
最近では、トヨタ自動車やソニーグループ、NTTなどの大手企業が出資し、2022年8月に設立された日系の半導体メーカー、ラピダスが日本国内で最先端のプロセスで半導体の製造を発表しました。
さらに、台湾のファウンドリ大手TSMCも熊本県に第1工場に続き第2工場を建設する予定と伝えられています。また、半導体設計や生産に必要な人材の教育についても、日本国内で官民が積極的に投資を行う動きが見られます。
これらの取り組みを考えると、日本はハード・ソフト面共に前向きな姿勢であり、半導体市場において存在感を持ち続けることができるといえるでしょう。