「運動のしすぎ」をどう見極めるか

図表4は、小学校低学年から新体操を始めた女子の成長曲線です。データのない部分はありますが、もともと小柄でした。全体的に身長の伸びが悪く、練習を始めてからは、次第に一番下の3パーセンタイル基準線よりも下に移行してしまいました。これは相当な練習のしすぎと考えられます。しかし、当時はこのような成長曲線を描いていなかったので、高校生になって初めて作成した成長曲線を見て、まさか! と誰もが驚いたそうです。

小林正子『子どもの異変は「成長曲線」でわかる』(小学館新書)より
個人の身長・体重の計測値をパーセンタイル発育基準線(3〜97%)の上にプロットしたものが成長曲線

一方で、図表5は別の新体操選手の成長曲線ですが、大変理想的に発育していることがわかります。おそらく運動量とこの子の体力が合っていて、発育にプラスになったものと考えられます。

このように、一人ひとり体力も気力も異なるので、成長曲線を描き、その変化を確認しながら、練習の内容を調整していく必要があります。特に新体操のように審美的要素が求められる競技では、身長の伸びを損なうような練習の仕方は避けるべきです。素質をよい方向に伸ばすために、新体操に限らずすべての運動選手は、成長曲線を描くことが必要不可欠です。

小林正子『子どもの異変は「成長曲線」でわかる』(小学館新書)より

伸びていた身長に急ブレーキがかかった理由

図表6の成長曲線は、中学2年生から急に身長が止まってしまったという男子の例です。

この男子は高校生になって毎日学校の保健室に来て身長を測っていたそうで、養護教諭が声をかけ、そんなに身長が気になるなら、これまでの発育の様子をグラフに描いてみようか、と言って、小学1年生からこれまでの健康診断記録の身長・体重を、成長曲線として表しました。それがこの図です。

小林正子『子どもの異変は「成長曲線」でわかる』(小学館新書)より

この成長曲線を描いた養護教諭はびっくりしました。なんとせっかく伸びてきた身長が、14歳手前から、まるで急ブレーキがかかったように止まってしまっているのです。それに反して、体重は急激に増えています。

養護教諭は、このとき何か特別なことをしたのかと男子生徒に聞くと、筋肉を鍛えたいのでウエイトトレーニングをガンガンやった、ということでした。もともと筋肉質だったのか、小学校時代も体重は高いパーセンタイルレベルでしたが、中学校に入ってからは強くなりたい一心で、筋肉を増やそうとがんばったとのことでした。

しかし、まだ身長がさかんに伸びている時期にウエイトトレーニングを続ければ、過度な負荷を骨にかけ続けることになり、その結果、骨端こったん線が閉じてしまい、身長の伸びが停止することが考えられます。

このような残念な例は、部活動をしている男子で時折見受けられます。指導者はおそらく、過度なトレーニングを奨励してはいないでしょう。けれども、もっと力をつけたい、レギュラーを取りたい、などの気持ちが強ければ、隠れてでも無理なトレーニングをしてしまうかもしれません。こうしたことのないよう、指導者は子ども達に、発育段階に沿った正しいトレーニングの仕方を、きちんと伝えるべきであると思います。