維新が政権政党化する非現実な二つの方法

メディアが期待するように、維新が短期的に(次の衆院選くらいまでのスパンで)政権の選択肢の一翼を担えるという状況はあるのか。無理やりひねり出してみたが、筆者に思い浮かぶ例は、せいぜい二つしかない。

一つは「希望の党騒動」(2017年)の再現のような野党再編劇の発生だ。希望の党騒動とはつまり、改革保守系の野党第1党を「一瞬で作る」ために「小選挙区で勝ち上がれる大都市の地域政党と、足腰となる組織(旧同盟系の労働組合)を合体させて母体(希望の党)を作り、そこにもともとの野党第1党(民進党)の大半を吸収してリベラル勢力を切り捨てる」というもので、アイデアとしては良くできていた(褒めてはいない)。

だが、結果はご承知の通りだ。リベラル系の立憲民主党が野党第1党の座を奪い、逆に改革保守系は脇に追いやられた。希望の党騒動の失敗に対する不満が、同党に代わる「改革保守系の野党第1党候補」として、維新への過剰な期待となっているのかもしれない。

ただ、大規模な野党再編は、現状ではほとんど非現実的だ。現在の立憲民主党は、希望の党騒動に懲りた議員らが、改めてリベラルな理念の下に再結集した政党であり、所属議員がほぼ同じであっても、「寄り合い世帯」と呼ばれたかつての民主党・民進党とは似て非なる政党だ。彼らはすでに野党第1党としてのスケールメリットを十分に感じており、野党再編に再び巻き込まれる動機がない。支持団体の労働組合にとっても、さらなる支持政党の分散を招くような政局の発生は、もうこりごりだろう。

もう一つは「自民党が何らかの理由で分裂して、その一方が維新と組む」ことだ。

今からちょうど30年前の1993年、政治改革をめぐり自民党が分裂、一方が野党勢力と組み「非自民」の細川政権が誕生した例があった。維新の馬場伸幸代表も、以前に同様の願望を口にしている。

だがこれは「当時の小沢一郎氏のように政局を振り回せる『剛腕』が、自民党か維新のいずれかに存在する」「自民党が次の衆院選で下野する恐れがある」の二つを、同時に満たす必要がある。現状はどちらも現実的ではない。両党の内外を見回しても、そんな「昭和の政治」みたいなシナリオを書ける存在は見当たらない。

政治を「権力闘争の勝ち負け」感覚で扱うのはやめよう

こんなことを書いていて、筆者自身つくづくばからしくなってしまった。政治にパワーゲームの要素が全く必要ないとは言わないが、こんな政治ドラマばかりを面白おかしく追いかけていたから、有権者が政治にそっぽを向くようになったのだ。

もういい加減、政治を「永田町内での権力闘争の勝ち負け」の感覚でとらえるのはやめたい。どの政党やどの政治家が、国民のためにどんな働きをしているのか、そのことを淡々と、適切に監視し、評価なり批判なりすればいい。「野党第1党になれるか」とか「政権交代できるか」とか、それらは全てその結果に過ぎないのだ。

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