「牙城」の関西圏ですら議席は飽和状態
特に「10増10減」で選挙区が増えている首都圏で伸びを欠いているのが大きい。統一地方選の後半戦と同時に行われた衆院千葉5区補選が良い例だ。主要野党がこぞって候補を擁立したが、結果として自民党への批判票は、維新ではなく立憲民主党の公認候補に集まった。維新の候補は立憲の候補にダブルスコア以上の差をつけられ、国民民主党の候補の得票さえも下回った。
小選挙区制において「非自民」層の票は「最も自民党候補に勝てそうな候補」に集まる。維新は関西ではこうした票を集められるだろうが、議席数の多い首都圏では、それは野党第1党の立憲になる。立憲は統一地方選の全ての種類の選挙でいずれも議席を増やしており、維新同様に地力をつけつつある。補選敗北の陰で話題にもならないが、少なくとも全国的には「維新が立憲に対し大きく差を詰めた」という状況にはなっていないのだ。
そして維新は、「牙城」の近畿で徐々に「飽和状態」に近づきつつある。大阪では19の小選挙区のうち15を維新が押さえており、この先の伸びしろが少ない。この「飽和感」が後半戦での3市長選敗北につながった可能性もある。
だから維新はその分、大阪以外の近畿圏に伸びしろを求めている。統一地方選の結果を見る限り、そこは一定程度成功しそうだ。だが、近畿全体の議席数は、小選挙区と比例代表を合わせて73。少ないとは言わないが、政権与党への足掛かりを得るには、近畿で圧勝するだけでは足りない。
「全国政党化」への道のりはまだまだ険しい
維新は今年の活動方針に「次の衆院選で野党第1党となる」「今後3回の衆院選で政権奪取」を掲げているが、今回の選挙結果を見る限り、それは容易ではないだろう。2005年の小泉政権における「郵政選挙」のような「旋風」が起きて、メディアが大きく維新をあおる事態になれば話は違うかもしれないが、仮に維新に猛烈な「風」が吹いても、現在の維新にはそれを受け切るだけの地方組織も党員の数も、まだ十分ではない。実際の選挙で取りこぼしてしまうことも多いのではないか。
これが維新の現状に対する、ごく一般的な見方だと思う。昨夏の参院選で指摘された「議席は伸びたが全国政党化に課題」という評価は、今も変わってはいない、ということだ。別にそれが悪いと言っているわけではない。「政党を育てる」とはそれだけ手間ひまがかかることであり、維新の挑戦は緒に就いたばかりだ、というだけだ。
にもかかわらず一昨年以来、メディアなどからやや無理筋な「維新上げ」が続くのはなぜだろう。この業界の「リベラル嫌い」や「保守二大政党待望論」の強さは今に始まったことではないが、無理にでも維新の期待値を上げようといきり立つさまは異様だ。