しかし問題は、こうした変化がやがて投資市場で過度に利用されるようになることです。市場の誰もが「今回は特別だ」と言うようになるでしょう。その意味するところは、「今回は非常に高価になる」ということです。その言葉を聞いたならば、バブルを心配し始めなければなりません。どのようなバブル市場でも、人々はいつも身の丈以上のものを手に入れ、高値で取引していますし、今回も同じようになるでしょう。
私はテクノロジーそのもののことはよくわかりませんが、15歳の娘はテクノロジーで何が起きているのかについて、多くのことを知っています。こういうことは若い人のほうが敏感です。家族にティーンエイジャーがいるならば、ぜひ聞いてみてください。
シリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻
さて、23年の3月に、米国のシリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻しました。
SVBは、米国のテクノロジー企業へ融資することで知られていました。今回の破綻は、米国の銀行では、2008年のリーマンショックで破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ規模の破綻となりました。
しかし、代わりとなるような競合の銀行はたくさんあります。米国には十分な資金を持つ銀行が多くあるのです。
通常、このような事態が発生して誰かが被害を受けると、私たちがしばらく呻き声を上げているうちに、事態が好転するのですが、たいていはそれだけでは終わりません。また誰かが次のトラブルに見舞われることになるでしょう。
次にどの業界が被害を受けるかはわかりません。歴史上、世界最大の債務保有国である米国は、これからさらに多くの問題を抱えることになるでしょう。テクノロジー業界だけでなく、銀行やあらゆるところに問題が見られます。今回の問題がまだ終わったとは思わないでください。
24年までには、必ず株式市場の大調整期が来ると思います。今すぐに株を売ろうとは思いませんが、23年の後半から24年の初めにかけては、空売りするタイミングになると予想しています。
そして、米SVBの破綻により、以前から慢性的な赤字が続いていたスイスのクレディ・スイス銀行にも信用不安が拡大しました。スイスの金融最大手UBSが同2位のクレディ・スイスを、30億スイスフラン(約4260億円)相当で買収することになりました。
株主はともかく、銀行を救済するというのは、世界の常識ではありえないことです。債券保有者であれば、劣後債のような信用度が低い債券を保有していても、株主より権利が優先され、弁済順位が高くなるはずでした。
しかし、スイス政府は、株主などを優先して救済しています。クレディ・スイスの劣後債の一種である「AT1債」の保有者は返金されないのに対して、弁済順位がより低くなるはずの株主は、UBS株が割り当てられることになったのです。
この状況は良いことではありません。非常に悪い先例になると思います。債券保有者が安心できない状況に陥れば、問題が悪化したときに、世界の金融市場でさらに似たような事態が繰り返されることになるでしょう。