「深い間柄」が希少価値になっている
なぜZ世代の若者の間で「友達推し事」がトレンドになったのでしょうか。
ポイントはその様子をSNSにアップすることにあります。友達本人に対して「私はあなたのことをこれだけ大切に思っているよ」というメッセージになるからです。
それだけではありません。「友達推し事」は、「スマホに写真を入れるほど絆の深い友達がいる私」というセルフブランディングに利用されている点も重要です。「オタク拒否ポーズをしてお互い嫌いだと冗談を言い合えるほど仲の良い友達が私にはいる、あなたたちにはいないでしょ?」という周囲へのマウンティングの心理も働いていると思います。
深い間柄の友達しかいなかった僕の世代からすれば、同級生と仲むつまじい姿をわざわざ周囲にアピールしても、何の意味もなかったわけです。しかし、SNSを当たり前に使い、友達関係が「広く浅く」なったZ世代には、深い間柄の友達がいること自体が希少価値になっていることがわかります。
誕生日を間接的にアピールするZ世代の心理
②「間接バースデーPR」とは、自分の誕生日をSNSで間接的にアピールすることです。深い友情を築き直そうとするZ世代の気持ちが表れているトレンドと言えるでしょう。「間接」であることがポイントです。
Z世代は「今日は私の誕生日!」と直接アピールすることに抵抗を感じる人が少なくありません。「祝われたい欲求」が垣間見えてしまい、周囲から“イタい子”と思われることを警戒しているからです。
その代わりにSNSでは、誕生日に関連する色、花、写真を投稿し、間接的にアピールする方法が流行しました。
その方法の一つが、「自分が生まれた日にNASAが撮影した写真」と題し、NASAが運営するウェブサイト「Astronomy Picture of the Day(通称:APOD)」の天体画像を投稿すること。また、誕生日に合わせて決められた花のデザイン「花個紋」や「バースデーカラー」の投稿もSNS上に続出しています。
こういった写真や画像をただ投稿し、今日が自分の誕生日であることを婉曲的に伝えます。投稿を見た人たちも、「これを載せているということは今日が誕生日なんだ」と理解するのです。