ルソーへと引き継がれ、フランス革命につながる

ロックは非常に頭のいい人で、文章の書き方にもそれが表れています。この本のページをめくるとわかるのですが、段落ごとに1、2と番号を振りながら、理論を展開するのです。しかも大事なことは何回も繰り返しますから、内容がしっかりと頭に入ります。ロックは、自分で書いたことが過激すぎた、ちょっと言いすぎたと思ったら、そのあとで丸くしたり、やわらかくしたりするなどの工夫もしています。

たとえば、市民にとって望ましくない王や政府はいつでも取り替えていいと主張したあとに、反抗していいのは、不正、不法な暴力を働いたときだけですよ、という注釈を加えます。なんでもかんでも文句を言っていいわけではない。ちょっとくらいは目をつぶってあげなさい、と。とてもチャーミングな人なんです。そういう読み方ができるのもこの本の面白いところでしょう。

ロックの時代の前後には、政治学や国家論、人間の自由や民主主義、憲法のことなど、さまざまなことが議論されています。ロックの思想はルソーへと引き継がれ、形となったのがフランス革命です。ルソーは『社会契約論』を書き、主権は人民にあることを繰り返し述べます。人間は理論がないと行動することができない。腹落ちして初めて動くんです。

「自由主義の父」「民主主義の父」と言われる理由

ロックの思想は、さらに1804年にナポレオンが公布したフランス民法典(ナポレオン法典)にもつながっていきます。フランス民法典の肝は、所有権を明記したことです。ロックもこの本のなかで所有権について書いていますが、法律で初めて所有権を明文化したのはフランス民法典です。所有権が認められたことで、資本主義経済が機能するようになりました。

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先に少し触れたネーションステート、国民国家という概念が生まれたのもこの時期です。それまではフランスの人たちは自分たちのことをフランス人だとは思っていませんでした。フランス国家という概念もなく、せいぜい「○○家の領地」「○○公爵の領地」という認識しかもっていなかったのです。わかりやすく言えば、「想像の共同体」ですね。

ロックが唱えた自由と財産、生命を守るための仕組みは、フランス革命を経て、自由と民主主義を基本として個人の財産権を認めるようになり、ネーションステートが成立し、1848年に起きたヨーロッパ革命で制度としてほぼ完成しました。その枠組を今の近代国家はすべて使っています。だからロックは「自由主義の父」「民主主義の父」と言われるようになったのです。