例題2:日本全国にある電信柱の数をどう試算する?
代表的なフェルミ推定の問いには、「日本全国にある電信柱の数は?」「全国で1年間に使用されるトイレットペーパーの数は?」といったものがよく挙げられます。グーグルが採用試験でつかったことで有名になりましたが、昨今では日本でも学生の就職活動の選考に取り入れられるようになっています。
では、フェルミ推定を使って「日本全国の電信柱の数」の答えをどのように論理的に導き出せるでしょうか。論理の筋道をご紹介しましょう。東京と大阪の間の距離は400~500kmぐらいと見積もれたとします。
そうすると東京から新潟の距離は300kmぐらいでしょうか。東京・大阪の距離から縦の長さ、東京・新潟の距離から横の長さを推定し、日本の全体の面積を長方形と見立てます。さて一方で、自分の住んでいる地域には自宅の周りを見渡すと100平方メートル当たりで何本ぐらいの電柱がありそうか考えます。さらに都会と田舎では面積当たりの数も当然違うでしょうから、田舎の100平方メートル当たりの本数をエイヤッと推定。
ざっくり日本全体に占める都会と田舎の比率、これもエイヤッと推定。ここまでくれば、もう計算できますね……このように推定を重ねていくと一見、難しくて分からなそうな問いにでも答えがおぼろげに見えてきます。
正解の倍から半分の間にはまっていればOK
突き詰めて精緻化した数字を出すこともサイエンス的には重要ですが、まったく予想もつかないことでも諦めずに、知的ファイティングスピリットを持って自分の頭で考えるという姿勢も大切になります。このようなフェルミ推定のエクササイズはサイエンスの地頭を鍛えていく訓練になり、やってみると大変楽しいです。
『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』(東洋経済新報社)や『「具体⇄抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問』(PHPビジネス新書)の著者でこの分野の第一人者であるコンサルタントの細谷功氏は、フェルミ推定は論理思考が重要であって、答えは気にしなくていい。正解の倍から半分の間にはまっていればいいので、諦めずにとにかく論理的に迫っていくことが大切だと指摘しています。
房はビジネスでまさにこのフェルミ推定を実践しました。「お金が完全にデジタル化された将来、世界中のすべての人がデジタル通貨を利用し、現物の紙幣やコインが存在しなくなります。その際、あらゆる通貨を個別に識別するために通し番号が必要になりますが、その通し番号はいくつ必要になるでしょうか」。これは房が実際に考えて自分なりの答えを導き出した問いです。みなさんならどのように考えて、どのような答えを引き出しますか?