ヒント2 子供の説明を聞くときは上からではなく下から

→大人の正しい声かけ例「わからないから教えてよ」

子供が先生役といっても、どんな内容を話してもらうのがいいのでしょうか。

あるとき教室で子供たちに、「みんなゲームやってる?」と聞いてみたことがあります。「やってるよ。今は、スプラトゥーン!」などと、どんどん返してきたので、「全然知らない。そのゲームって何をしたら勝ちなの?」と質問したのです。すると、子供たちの目がキラッと光りました。

写真=AFP/時事通信フォト
日本のゲーム大手、任天堂の店舗で、任天堂のゲーム「スプラトゥーン」のキャラクターが表示されたスクリーンの前を通るマスクを着けた人(2022年2月3日、東京都千代田区)

俺に話させろとわれ先に争って、説明合戦に。そのうちに一人などはホワイトボードを使ってシリーズ3作の違いを整理しだしました。

別のときに、普段あまり発言しない女の子がBTSの話に食いついたこともありました。そこで「そもそも何人いるの?」と聞いてみました。その子はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに顔を輝かせて、韓国の男性アーティストで7人いること、年少組と年長組があること、主に歌う人とダンサーに分かれること、などを説明してくれたのです。驚くほど整理されてわかりやすい説明でした。

自分の好きなことについて聞かれたとき、子供はスイッチが入ります。素人でもわかるようにわかりやすく説明してやろうという気持ちになるのです。そこが大切です。

そういうときのエンジンのかかり方はすごい。普段より10倍くらい賢くなるのではないかと思います。日常での会話では、子供は手抜きをしています。ものわかりのいい大人である親には、多少いい加減でも伝わると知っているのです。だから「テレビ」「おしょうゆ」などと単語だけで話したり、頭のなかがごちゃごちゃのまま考えずに話し出したりします。

でも、自分にとって大切なことを伝えるという目的のためなら、ちゃんと説明したいという気持ちになり、論理性を普段より意識するのです。これは趣味の話だけではありません。教室につるかめ算は大得意という子がいました。その子に「一番くわしいから、わからない子でもわかるように教えて」と言うと、スイッチが入りました。「まず、全部亀だったと仮定するとね……」などと、筋道を立てて教えてくれたのです。

親には、演技力が求められます。本当は知っているけれど教育的観点から子供に説明させている、という態度では子供のエンジンはかかりません。自分が年下というくらいの姿勢で、本当に教えてほしいと伝えてみてください。