親が子供の進学先に与える影響に注目すべき

親たちにジェンダー平等的な考え方が浸透していくには、社会全体の平等度が上がっていくことが重要です。図表1が示すように、現在男性が多いと思われる「情報科学」を、娘の進学先として賛成する割合がきわめて高かったのは、親が社会の動きに敏感であることの現れでしょう。

横山広美『なぜ理系に女性が少ないのか』(幻冬舎新書)

一方で、一部の人は、現在、企業の人材ニーズが高く女性獲得にも熱心な工学全般で、「女性には向いていないから」という理由で反対していることも分かりました。このような結果からも、理系分野の企業側のイメージをアップデートしていくことが、女子の理系進学を促すことにつながると思われます。

もちろん、企業側の実態として、誰もが働きやすい環境が整えられていることが必須となります。私たちの研究プロジェクトの特徴は、このように多面的なアプローチでこれまで可視化されていなかったジェンダー平等度の影響を明らかにしたことです。

教育研究のSTEM分野では普通、ジェンダー規範や、性役割分担意識まではなかなか論じられません。親のジェンダー平等度・ジェンダーステレオタイプが娘の進路選択に及ぼす影響や、理系分野への進学に反対する理由の違いなども、関連分野であまり注目されてこなかった新しい視点です。「ダイバーシティ・インクルージョン」の時代には、単に男女の違いを調べるだけでなく、こうした視点や考え方を導入していくことが、ますます必要になると感じています。

本稿では主に以下の論文の研究成果を扱っています。
Ikkatai, Y.,Inoue, A., Kano, K., Minamizaki, A., McKay, E., and Yokoyama, H.M. (2019).‘ Parental egalitarian attitudes towards gender roles affect agreement on girls taking STEM fields at university in Japan’. International Journal of Science Education , 41(16), 2254-2270 井上敦 (2019)「親の数学のジェンダーステレオタイプと 娘の自然科学専攻」『日本科学教育学会年会論文集』 43 、9-12

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