自民と公明も「目指す社会像」は異なる

民主党政権の時を思い出してほしい。自民党と共産党は野党として、共に民主党政権を激しく批判していたが「自民党と共産党が選挙協力する」「連立を組む」などということは、誰も考えていなかった。それでいいのだ。

だいたい「目指す社会像」がどう見ても全く違う自民党と公明党の連立を容認しておきながら、野党にだけ「連立を組めるほどの社会像の一致」を執拗しつように求め続けるのはおかしくないか。そういう言い方は結果として野党全体のまとまりを崩し、その勢いを削ぎ、自公政権を利しているだけだ。

野党各党が一枚岩で政権に立ち向かえるか否かが、野党全体の存在感や影響力にどれほど大きな違いを生むかは、昨年の通常国会と臨時国会の違いを振り返れば分かることだ。野党各党は改めて、国会における「野党」と、それ以外の(例えば選挙などでの)「個々の政党」の違いをしっかりと切り分けた上で、政権与党に効果的な戦いを挑んでほしい。

確かに、国会内での野党の連携によって各党の間に信頼関係が醸成され、その中からいくつかの政党が選挙協力や将来の連立協議に進む可能性はあるかもしれない。だがそれは結果論であり「その後」の話である。そういうことは「国会の外で」、必要だと思う政党が必要に応じて議論すればいい。

立憲は共産との連携をさらに強めるべき

もういっそのこと、野党は今国会で「さらに大きな『構え』」に挑戦してはどうか。国会内での維新との関係を維持したまま、共産党との連携をさらに強めるのだ。

このままでは、仮に立憲と維新が連携を維持できても、今度は共産が、野党分断をあおりたいメディアの「飯の種」になってしまいかねない。ただでさえ通常国会は「安保国会」のレッテルが貼られそうな空気だ。「立憲と維新の接近に共産が反発、足並みに乱れも」などと評され続ければ、やはり野党全体の戦力を削ぎ、岸田政権を利することになりかねない。

立憲の岡田克也幹事長は、民主党が下野した後の党代表として、2016年に日本維新の会の流れをくむ「維新の党」と合流して「民進党」を結党する一方、同年の参院選では共産党も含む野党間の選挙協力を進めた。ざっくり言えば「右と左の双方に『構え』を広げた」のだ。ちなみにこの時の幹事長は、立憲を創設した枝野幸男氏である。

国会内でこの再現を目指してはどうか。この役割を期待されてこその岡田幹事長ではないだろうか。

さっそく、と言うべきなのか。立憲民主党の安住淳、共産党の穀田恵二両国対委員長が16日に会談し、防衛費増額に伴う政府の増税方針や旧統一教会問題での連携方針を確認した。

もちろん、自民党がこれを黙って見ているわけがない。茂木敏充幹事長は翌17日、維新の馬場伸幸代表と会談し、憲法改正やエネルギー政策、安全保障などで協力を進めることで一致し、野党間にくさびを打ち込む動きを見せた。だが、さらにその翌日の18日、今度は立憲の泉健太代表と維新の馬場代表が会談し、通常国会での「共闘」継続で合意した。野党の動きが一歩先を行っている感があり、面白い。

「構え」の作り方はこれで良いのではないか。別に維新と共産が直接連携する必要はない。立憲を「媒介」として使い、結果として国会での「大きな構え」ができれば良いのだから。

いずれ維新は「自公政権と立憲ほか野党勢力のどちらに軸足を置くのか」を突きつけられることになるだろうが、それは今国会で与野党のどちらが良いパフォーマンスができるかに左右されるだろう。その意味でも野党の戦いは重要である。

目指す社会像がバラバラであっても、少なくとも国会内では「岸田政権と戦う」の一点でまとまれる。「提案型」などと称して政権にすり寄ることもない。筆者が見たいのは、そんな普通の野党である。

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