その最大の理由は年金でしょう。日本では「年金をあてにするな」という意見が大半なのに対して、アメリカ人は年金を心から楽しみにしているのです。

その違いを生み出しているのも経済成長です。アメリカの年金は株式等による運用が基本ですが、例えばニューヨークダウ平均の推移を見ると、30年ほど前と比べて10倍くらいになっています。つまり、掛け金に対して相当大きなリターンが期待できるのです。

アメリカ駐在経験のある日本人がアメリカの年金をもらえてずいぶん助かっているという話を聞きますが、それも当然の話でしょう。

一方の日本では、そもそも年金は「賦課方式」。つまり、現役世代が年金受給世代を支えるというモデルですから、少子高齢化が進めば進むほど脆弱ぜいじゃくになるのは当然の話です。

また、投資をしていたとしても、日本の株価はこの40年にわたって大して上がっていないどころか、バブル期に比べれば下がっているくらいですから、大したリターンも期待できません。これでは、老後が不安になるのも当然の話です。

結局、GDPを大きくしないことには、将来不安は決して解消しないのです。

日本は「みんな平等に貧乏になる道」を進んでいる

それに対して、「経済成長なんて目指さなくてもいい」という主張をする人がいます。幸せとはお金ではない。お金がなくても幸せになれる。小さくても輝く国になればいい。そういう主張です。

藤巻健史『超インフレ時代の「お金の守り方」』(PHPビジネス新書)

そして、「アメリカは確かに経済的に発展しているが、格差が広がっており、国民全員が幸せなわけではない」と指摘します。

確かにアメリカで格差が大きな社会問題になっているのは事実です。驚くような大金持ちがいる一方で、毎日の生活すらままならない貧困層も数多くいます。格差の問題は社会を揺るがすほどになっており、犯罪率が日本よりも高いのは事実です。

ジャズのレコード制作で何十年とニューヨークに住んでいる高校のクラスメートに会いに行ったことがあります。その時、有名なジャズミュージシャンの家に連れていってもらいました。

一室の狭い部屋の両側に、二段ベッドが2つずつ並んでいて、8人の普段の生活空間は、二段ベッドの間の狭いスペースでした。有名ジャズミュージシャンでも、こんな生活をしているのか、と驚きました。

今でも、ボストン郊外のウースターの町の交差点にはホームレスが何人かいます。ウーバーの運転手さんは「いくらでも仕事はあるのだから、働け!」と怒っていましたが、不法移民で働くのが難しい人なのではないかと思いました。

日本でも最近は格差問題が叫ばれていますが、アメリカに比べれば圧倒的に平等だと言えるでしょう。しかし、私は今の日本は、格差を問題視するあまり「みんな平等に貧乏になる」道を選んでいるとしか思えないのです。

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