住民が恐れているのは地域の“消滅”

ちなみに、小中学校の統合というのは簡単にはいかない。該当する学校があるにもかかわらず統合できなかった事例は199に上った。

「地理的要因や通学距離の関係で困難」(46%)、「域内の小中学校が1校ずつしかない」(39%)ことが主な理由だが、地元の理解の取り付けも大きなハードルだ。学校の規模の適正化に向けた課題や懸念として、89%の教育委員会が「保護者や地域住民との合意形成」を挙げている。

河合雅司『未来の年表 業界大変化』(講談社現代新書)

学校がなくなる地域の住民の反対が根強いのは、地域そのものの“消滅”に直結する恐れがあるためだ。学校がなくなると、子育て世帯の流出が予想されるばかりか、ファミリー層の移住者の受け入れも難しくなる。子育て世帯が減れば、農業をはじめとする地域産業は担い手不足となり、公共交通機関や地元商店の廃業や撤退へとつながる。地域人口の減少を加速させる引き金になるとの懸念である。

反対論を理解しないわけではないが、少子化が深刻化する社会においてすべての学校を維持することは困難である。一方で、「規模の拡大」が最終的な解決策というわけではない。地域の人口が減り続けて地方自治体の存続すら危ぶまれるようになれば、再統合を迫られる。

地方公務員の採用難も、公務員不足による行政サービスの劣化も「消滅」へと歩みを始めた地方自治体が通る道である。

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