この状況下で中間管理職や一般社員は何を支えに働いているのか。働くモチベーションを質問したところ、もっとも多いのは意外にも「給料」だった(図24)。
「これは昇進や仕事の意義、成長感といった要因が働きがいにつながりにくくなったので、『せめてお金をもらえないと、やってられない』という消極的な理由で浮上したと考えるべき。ただ、年収の上がらない時代に突入し、給料もモチベーションになりづらくなっている。回答者は、どう答えていいのか、かなり混乱したのではないでしょうか」(守島氏)
報酬に対する心情は、低所得層ほど複雑だ。今回、「面白い仕事なら収入は低くてもいいか」「仕事はお金を稼ぐ手段にすぎないか」という相反する2つの質問を用意したが、該当者はどちらも低所得層ほど多かった(図26、27)。この結果を植木理恵氏はこう分析する。
「年収が伸び悩むと、そこに働きがいを見出していた人は全否定された気分になり、自己愛から『収入はどうでもいい。仕事にはお金以上の意味がある』と考えようとします。ただ、これは健康的な発想。この時代状況では、年収にこだわっていると気分が落ち込むばかりです」
植木氏は別の意味でも、「報酬をあまり意識すべきではない」という。
「面白いパズルを夢中で解く子供にご褒美でお菓子をあげると、途端にパズルへの関心を失ったという実験があります。心理学ではこの現象を“アンダーマイニング”といいますが、働きがいに関しても同じことが起こりうる。内発的動機から仕事に取り組んでいるのに、そこにインセンティブが加わると、内発的動機が外発的動機にすり替わり、かえって意欲が減退する恐れがあるのです」
※すべて雑誌掲載当時