第2の理由として、現地人材への権限の委譲も少ない。「日本の企業なんだから日本人が回すのが当たり前」という姿勢があからさまで、現地人材を欧米などで現地子会社の副社長クラスに登用しても、実質的な権限は与えず、重要な問題は日本人だけで集まって決めることが依然少なくない。ましてアジアとなると、現地採用の人材をトップ近くのポジションに就けている例はほとんどない。
第3に、有能なマネジャークラスへの報酬が低い。コストカットのために海外に進出する企業が多く、また、年功序列型報酬制度のため、勤続年数が長いだけで、無能で貢献度の低い人間が、入社間もないけれども有能で多くの仕事をこなしている人間よりも多くの報酬を得ている。
これは能力を自負する人材にとっては我慢できない事態で、このため日本企業では仕事のできる人からやめていき、そこそこ働いて安定した生活が確保されることを重視する人材だけが残る傾向にある。
第4に、体系的な人材育成プログラムがない。日本企業の場合、新人研修やワーカーのスキルアップには熱心だ。しかし、上の層になればなるほど、育成プログラムがなくなり、緻密な育成プログラムを用意する欧米企業と正反対である。これでは意欲のある人材は残らないし、入ってこないだろう。
第5に、社会貢献の姿勢が少ないことが挙げられる。欧米企業は各国政府が行う社会的な事業に寄付したり、学生に奨学金を出すのに熱心だが、日本企業はあまり積極的ではない。1つの大学で50人ないし100人の学生に多額の奨学金を提供する欧米企業に比して、日本企業は「年間3000円を、2人に対して」といった具合にスケールが大きく異なる。なかには社会貢献に熱心な企業もあるが、全体としては少数派で、それらの企業も「日本企業だから」とひとくくりに評価されて損をしている。
第6に、日本人は英語が不得手だ。多くの国の人々が集まったとき、言葉がわからないとビジョンも示せず的確な指示もできない。「日本企業はグローバル度が低い」「一緒に働いても、コミュニケーションがとれない」と思われてしまうのは大変、残念である。
日本企業のこうした弱点を克服し、有能な人材を集め、登用し、有効活用して競争力を高めていくにはどうしたらよいだろうか。
最大の課題は、世界のどの地域にも適用できるようなリーダー選抜の基準を整備することと、どのような人材をその企業のリーダーにするかというリーダー像を明確にすることだ。