・歯周病が心疾患の引き金に

歯周病菌は動脈硬化を悪化させる要因ともなります。動脈硬化は血管が硬くなったり、コレステロールなどの塊がたまったりすることで血管が狭くなりますが、血管に入り込んだ歯周病菌がこれらを進行させます。血管が詰まると、狭心症や心筋梗塞など、命に関わる心疾患を引き起こします。

・脳卒中のリスクも高めてしまう

歯周病菌が血管に入り込み、脳内に移動することで、脳卒中のリスクを高めることもわかっています。脳卒中には、脳の血管が破れる脳出血、血管が詰まる脳梗塞がありますが、これらは心疾患同様、動脈硬化によって起こります。歯周病が、脳内の動脈硬化を悪化させてしまうのです。歯周病患者が脳卒中を発症するリスクは、歯周病がない人の1.48倍〜2.63倍との報告もあります(和泉雄一、青山典生「歯周病と脳卒中の関連」脳卒中36: 374–377, 2014)。

・歯周病は妊婦にもリスク

妊娠中の女性に歯周病がある場合、早産や低体重児出産のリスクが高まることがわかっており、そのリスクは歯周病がない妊婦の2.83倍に上るとのことです(Preterm low birth weight and maternal periodontal status: a meta-analysis. Am J Obstet Gynecol. 196(2):135. 2007 Feb.)。歯周病による早産リスクは、他の代表的な危険因子である飲酒や喫煙の約7倍とも言われています。妊娠中はホルモンの影響で歯周病になりやすい点にも注意が必要です。

・歯が少ないほど認知症になりやすい

最近ではアルツハイマー型認知症の発生に関与するアミロイドβ蛋白の蓄積・増加に歯周病菌が関係していることがわかってきました。マウス実験では、歯周病菌を投与したマウスのアミロイドβの受容体が増え、認知症の症状を示したそうです。アルツハイマー型認知症患者の脳内から歯周病菌が検出されたという報告もあり、人においても歯周病菌がアミロイドβの蓄積を増やすことが示唆されています。

歯の本数と認知症リスクの研究も行われています。歯が20本以上残存している人と比べて、10〜19本の人では1.11倍、1〜9本の場合は1.34倍認知症のリスクが高いことなどが示されています(「歯数とアルツハイマー型認知症との関連で日本歯科総合研究機構が論文を発表」日本歯科総合研究機構 2021年5月27日 )。別の研究では、アルツハイマー型に次いで発症の多い脳血管性型認知症についても、歯の残存数が少ないと発症リスクが高まることが報告されています。

30代以上の3人に2人が歯周病に

歯の喪失は高齢になってからの問題と感じている方も多いでしょう。しかし、失った歯がある人の割合は30歳未満では10%を下回りますが、年齢とともに徐々に増え、40〜44歳では31.1%、45〜49歳では41.1%の人が歯の喪失を経験しています(厚生労働省 平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要)。30代以上の3人に2人が歯周病に罹患りかんしているとも言われており、歯の喪失は思ったよりも身近なものと考えた方が良いでしょう。

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