陰茎も大事だが精巣の大きさも大事

第3条 自分の精巣周囲に注意を払うべし(竿よりも玉が大事)

ずばり、妊活の主役はどちらかというと陰茎ではなく、精巣。つまり、竿よりも玉が大事です。思春期に二次性徴を迎えて最初に変化が起こるのは、精巣です。精巣が大きくなり始めてから、その他のところも大人の身体へと変わっていきます。

ところが、陰茎のほうがどうしても目立つため、その大きさは気にしたことがあるのに、精巣の大きさを気にしたことがある人は少ないのではないでしょうか。泌尿器科外来でも、陰茎の大きさや包茎についてはよく相談がありますが、「精巣が小さいのではないか」と言って受診される方は、皆無です。

精巣は、男性ホルモン(テストステロン)と精子を作る臓器で、左右の陰嚢(袋)内に1つずつあります。テストステロンは性欲や勃起に関係する大事なホルモンであり、精子はまさに子作りの主役です。つまり実際には、陰茎の大きさよりも、精巣の大きさのほうが重要なのです。

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思春期前に2mL以下の容量であった精巣は、大人になると15~20mLまでに増大します。こんな劇的な変化を遂げるのに、あまり気にされないのは残念でもあります。

精巣は、一般に左より右のほうが大きいことが多く、日本人651人の調査によると、精巣の平均重量は右15.35g、左14.53gであったという報告があります(注1)

(注1)田坂登美、平賀聖悟、北村真、飯田宜志、黒川順二、飛田美穂、佐藤威「日本人正常精巣の重量およびサイズについての検討」『日本泌尿器科学会雑誌』77巻9号、1506~1510頁、1986年

ある程度正確に測ろうとすると、やはり病院に行かなければならないのですが、自分で簡単に精巣の大きさをチェックする方法があります。親指と人差し指でOKサインを作り、その輪の大きさより自分の精巣が大きければOK。順調に成長した正常な大きさです(注2)

(注2)池田稔、池田景子「お~い男子諸君!! たまには玉の大きさ気にしろよ! ~精巣自己触診の勧め~」『日本性科学会雑誌』30巻、1.2号、63~68頁、2012年

OKサインの輪より大きくなくても、それほど大きさが変わらなければ問題ありませんが、半分以下である場合には、少々心配な大きさということになります。その場合は、妊活中であれば、早めに病院を受診したほうがよいでしょう。

精巣が大きすぎたりしこりがあるとがんの可能性がある

また、精巣がOKサインよりも2倍以上大きいとか、精巣の中にしこりがある、精巣が全体的に硬い(骨のような硬さ)といった場合も、早めの受診が勧められます。

精巣が大きくなる原因は2つあり、一つは水が溜まっているだけの場合、もう一つは腫瘍です。触った時に軟らかければ、陰嚢内に水が溜まっているだけの「陰嚢水腫」です。この場合はさほど健康に問題はありません。大きくて困る場合には、外来で水を抜く処置をするか、根治するための手術を行います。

一方、陰嚢を触った時に硬くゴリゴリした感触がある場合は、腫瘍ができている可能性があります。多くの場合は悪性腫瘍、つまり、「精巣がん」です。精巣がんは、10万人当たり1人が発症する、それほど多くはないがんです。しかし、20代、30代で最も多く発症するため、不妊治療で病院を受診した際に偶然見つかるケースがあります。