ときには厳しく叱ることも必要だが…
夜ふかしをしてYouTubeを見たり、宿題を放り出して外に遊びに行ったりして、子どもが羽目をはずしすぎだと感じたときは、厳しく叱っていいと私は思います。ただし、子どもの「やりたいこと」を気にかけず、「ふつう」はこうとか、これが「正しい」などと「正論」ばかりで叱るのは避けたいものです。
こういう叱り方や指導がすぎると、子どもは「世間」や人の目ばかり気にするようになり、「自分のやりたいこと」に対してだんだん鈍感になっていきます。さらに悪いことには、「他人のやりたいこと」を感じとるセンスも育ちません。ところが、子どもに「うれしい」のインタビューをしていくと、自発的な「やりたい」、つまり内発的動機の自覚が促されて子ども独自の価値観が育まれていきます。
「うれしい」に注目してもらいながらおしゃべりしていると、子どもの話しぶりは自然と生き生きしてくるのです。それは「ちゃんと向き合ってもらえている」という実感を持てるからです。この経験が、思いや意見の一方的な「述べ合い」ではなく、「聞き合い」でもある「対話」への第一歩になります。
信頼関係を築くために役立つ「オウム返し」
こうした対話は、自分だけではなく、人の「うれしい」や「やりたい」への、子どもの自然な興味を引き出します。
生き生きとした対話を親子で続けることによって、いつの日か、今度は子どものほうから親御さんの「うれしい」や「やりたい」についてインタビューが始まります。「正しい」は、ほどほどにして、「うれしい」に注目していくと、子どもの自己肯定感だけでなく、人の喜びや望みを察する力、共感力も育まれていくのです。
私は子どもたちと話をする際、意識的に相手の言葉の「オウム返し」をしています。
【私】「ああ、イヤなことがあったんだね」
【子】「テストで満点がとれてうれしかった」
【私】「そう、うれしかったんだね」
このように相手の言葉をシンプルにくり返す「オウム返し」は、相手に「話を聞いてもらえている」という実感を与えやすく、相手との信頼関係を築くのにとても役立ちます。また、相手の話を不用意にさえぎることを防ぐ効果もあります。
このオウム返しも、ロボットのように子どもの言葉を機械的にくり返すだけだと逆効果になります。音楽を聴くときのように、言葉の意味だけでなく、言葉のトーンや調べ、リズムなども味わって、デュエットするように返していくとより効果的でしょう。
慣れてきたら、「テストで満点がとれてうれしかった」「そう、うれしかったんだね、天にも昇るような気持ちだった?」こんなふうに、より高度な表現、言い換え表現を添えてあげるようにすると、子どもの表現力がどんどん豊かになっていくのでおすすめです。