「外国人観光客しか泊まれないホテル」があっていい
先日亡くなった稲盛和夫氏は著書『稲盛和夫の実学』(日経ビジネス人文庫)の中で、「値決め」こそが経営だとし、「お客さまが納得し喜んで買ってくれる最大限の値段」で注文を取るべきだとしている。
「商売というのは値段を安くすれば誰でも売れる。それは経営ではない」とまで言っている。長く続いたデフレ経済の中で、安くしなければ売れないとし、コストを下げることに邁進した。それが人件費へのしわ寄せにつながったというのが、この四半世紀の日本の経営だったのではないか。
それを転換するチャンスが、インバウンド消費の世界にやってくる。ただし、給与の増加につながってくるまでの間、インバウンド観光客しか泊まれない日本人には高嶺の花のホテルや、日本人には手が出ない外国人に大人気の高級工芸品というのが出てくるに違いない。
しばしの間、辛抱が必要ということになるが、製造業などに比べて、売り上げの回収が早く、従業員のボーナスなどに短期間の間に反映させられるのが小売りや飲食、宿泊といった業態であることも事実だろう。
円安によって、間違いなく、生活コストは上がっていく。世界の物価上昇からの無縁ではいられない。そうした中で生活を維持し、より豊かになっていくためには、給料を上げていくしかない。そのためには企業が価格を上げてきちんと「儲け」ることが重要になる。円安を「チャンス」に変えて儲ける「経営力」が求められている。