知能は運動から育つ

では、楽しく取り組むための工夫には、どんなものがあるでしょうか。

たとえば、「競争」や「ゲーム」の要素を取り入れてみるのも1つです。

私の幼児教室には「うんてい」を設置しています。小学校の校庭などにある、はしごを横にしたような体育機器です。

写真=iStock.com/andresr
知能は運動から育つ

アメリカの幼児教育研究者であるグレン・ドーマン博士は、「知能は運動から育つ」と述べています。なかでも、「うんていをさせるとよい」と提唱されているのを知って、教室でも取り入れることにしました。

最初は、うんていにぶら下がるだけです。幼児にとっては、まず「握る」という力が運動能力の発達の起点になる、と私は考えています。

そこで、教室では毎年、うんていにぶら下がってタイムを競う「鉄棒ぶら下がり大会」を開催しています。みんなで競争すると、とても盛り上がります。そして次は、「もっと長い時間ぶら下がりたい」と、自分から思うようになります。

池江選手を育てた「うんてい遊び」

家庭のなかなどに競争相手がいない場合は、「記録会(タイムトライアル)」とか「発表会」みたいにする方法もあります。親がちょっとした工夫をすることで、子どものなかにある自発性やチャレンジ精神が育ってくるものです。

璃花子が小学生のときには、自宅のリビングにもうんていを設置しました。すると、璃花子は、毎日のようにぶら下がっていました。ぶら下がったままテレビを見たり、キッチンとリビングを往復するときに、うんていを使って移動したり。

次第にうんていを上手にこなせるようになる姿を見て、私は、「こんなことはできる?」「こんなことしてみたら?」と提案してみました。

すると、後ろ向きに移動したり、1段とばし2段とばしをしたり、今つかまっている棒から両手を離して次の棒に飛びつくことを連続でしたり、連続50本移動したり……と、いろいろな技を披露するようになりました。

もちろん、私は、下から璃花子を見上げながら、「がんばれ!」「すごい!」「もう少し!」と、応援や声かけを続けていたのです。璃花子の身体能力は、子どもの頃のうんてい遊びが大きく貢献していると思います。