問いかけに「もし」をつけてみる

バイアス破壊は、仮定法の「制約の撤廃」「架空の物語」と組み合わせの相性が抜群です。

「もし美容ニーズを持っている女性をターゲットから外してもよいとしたら、どんなリニューアルアイデアが考えられますか?」(仮定法:制約の撤廃)

「もしこの世界から五感のうち「視覚」がなくなったとしたら、自社の製品をどのようにリニューアルしますか?」(仮定法:架空の物語)

安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

これまで保持してきた「とらわれ」をなかなか捨てられない心理には、原因があるはずです。そのひとつには「実際に、ユーザーが美しくなりたいニーズを持っている」という事実があるでしょう。このケースに限らず、ダイナミックな商品リニューアルや新商品開発などの事業変革を妨げるものは、チームの「とらわれ」だけでなく、ユーザー自身の顕在化したニーズの「とらわれ」も含まれます。

現在では当たり前であるタッチパネルディスプレイ型のスマートフォンが普及する以前は、ユーザーは「もっとボタンを押しやすくして欲しい」とは考えていたでしょうが、「ボタンを撤廃して欲しい」とは考えていなかったはずです。ダイナミックな事業の変化を起こすためにも、既存ユーザーの「とらわれ」を撤廃したり、時に思い切って架空の物語を設定してみることは有効です。

バイアス破壊は組織の制度や権威にも使える

「とらわれ」の対象が、組織の制度や権威に基づくものである場合も、バイアス破壊と仮定法の質問パターンをうまく組み合わせることが有効です。

元々ファクトリー型だった大企業メーカーであっても、ユサブリモード(図表1)の質問を駆使すれば、現場の開発チームからボトムアップ式にアイデアが徐々に出てくるようになるでしょう。上層部から設計図を与えられなくても、自分たちが作りたいと思えるアイデアを、自分たちで考えられるようになっていくはずです。