謝らない、感謝しない、報告・連絡・相談しない妻

妻が育児休暇から復職する日は、保育園の入園式だった。妻は、前日になって突然、「育休明けの新年度初日だから休めない」と言い出す。

「『休めない』じゃなくて、『どうしよう?』と相談する発想はないのか?」とあきれつつも、狩野さんが休みを取って入園式に参加すると、翌日から『慣らし保育』というものがあることを知る。

入園式だけならまだしも、1週間以上子供のために仕事を遅刻・早退というのは難しい。狩野さんは、母親や妹に頼んで何とかやり過ごしたが、妻は毎日「休めない」の一言で、さっさと学校に行ってしまった。

また、長男が1歳になった頃、例によって電話一本もなく妻の帰りが遅いため、狩野さんが長男に食事をさせた。すると翌日、妻が離乳食用のスプーンがないと騒ぎ出す。

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使った記憶がない狩野さんは、「知らない」と答えると、「子供のことくらいちゃんとやってよね!」と吐き捨てる妻。狩野さんが探すと、ゴミ箱からスプーンが出てきた。

「昨日最後にスプーンを使ったのはあなただよね?」と狩野さんが言うと、「あ、そう、分かったよ」と目も合わせず言う妻。

狩野さんは、「何が『分かったよ!』だよ!」と怒鳴りたいのを必死でこらえた。

同じ年、妻が通勤途中で交通事故を起こした。相手はバイクの中年男性。原因は妻の一時不停止だったが、幸い相手に大きなけがはなかった。

ただ、妻は公立小学校の教員。人身事故になると、最悪何らかの処分も考えられる。校長から、「念のため相手にお詫びに行くように」と言われたため、長男を狩野さんの実家に預けて、夫婦でお詫びに向かった。

狩野さんは、お見舞金を多めに包み、ひたすら平身低頭。

すると相手からは、「そこまで謝ってくれるなら人身事故にはしない」と言ってもらえた。

ところが帰りの車中、開口一番、妻が言った。

「なんで奥さんが事故を起こすと旦那が出てくるんだろうね? 逆だったら奥さんと謝り行くなんてあんまりないよね?」

狩野さんはあぜん。

「妻に感謝してもらいたくてお詫びに行ったわけじゃないですが、『アンタがどんな疑問を抱こうが勝手だが、アンタのために頭を下げた俺に言うことか? まず先に言うことはないのか?』と思いました」