左脳だけでなく、右脳も活発になる

では2ケタ×1ケタの暗算を見てみよう。掛ける数を、まずは掛けられる数の十の位にかけて、その答えを魚の胴体の左側2マスに記入。次に一の位に掛けた答えを後ろの2マスに記入。最後に、魚の胴体の中だけを足して、しっぽの中の数字と並べると正解の数になる。

2ケタ×2ケタでは、おさかなプレートのほかにサンドイッチプレートとスペースシャトルプレートを用いて答えを導く。繰り返しになるがここで使うのは九九と足し算だけであり、子供たちは、これらのプレートに数字を配置するだけで暗算ができてしまう。これなら簡単で、おもしろい。

事実、講習を受けたお子さんの保護者からは「子供がやる気になって、自ら勉強した教材はこれが初めて!」「テストではひっ算のミスばかりでしたが、ミスがなくなりました」「できた!!という嬉しさが、次の問題を解いてみたいという意欲につながりました」など、絶賛の声が多数寄せられている。

実はこのメソッドは、単なるテクニックではなくて、このトレーニングを行うことで脳が活性化する効果も期待できる。岩波さんは計算しているときの自らの脳の血流を調べている。

「通常のひっ算では基本的に左脳しか働かないのですが、ゴースト暗算をしているときは右脳も左脳も同時に働いているというデータが得られました」

左脳は計算や論理に、右脳は感覚や創造性に関連が深いといわれるが、その両方が活性化することで、どのような影響が考えられるのか。

「まず、ゴースト暗算を行うことで左右の脳が同時に活性化し、小説や絵画、音楽などの芸術面でのセンスが磨かれることが考えられます」

さらにもう一点、岩波さんはこのように指摘する。

「インドからたくさんの優秀なITエンジニアが生まれた背景には、19×19の暗記のベースがあったからだと考えられます。ゴースト暗算を行うことで99×99までの計算力の土台をつくり、さらに活性化した右脳が新しいビジネスや技術をクリエートする力を伸ばしていく。子供たちが生きていく力を育むことができると思っています」

ゴースト暗算と脳の活性化がもたらす豊かな未来。その相関を探る岩波さん。4月にはゴースト暗算の割り算版の出版も予定しているという。

(交 泰=撮影)