結婚は孤独の解消に有効だが…

このように、結婚して夫婦、家族がうまくいくことは孤独を減らし、そうでないと孤独が増える。そして結婚をするためには男性は平均以上の安定した年収が求められる。そのため正規雇用であることが求められる。だからそうではない男性には孤独感を増していくしかない。性格が良い、人間性が素晴らしいからといって、以上のような諸条件を満たさない限り、恋人にはなれても結婚は難しいのである。

私としては、男性だからという理由で安定した経済力を期待されるのはジェンダー論的には男性差別だと思う。だから安定した経済力ではない部分で男性が評価をされる価値観が社会に広がるべきだと思うが、現実にはなかなか時間がかかるであろう。

山上容疑者も、他のさまざまな事件の容疑者・犯人も、犯罪を実行する根本的背景には経済的困難がある。安倍元首相への直接的な恨みがあったわけでもない。安倍元首相が山上容疑者の母の信仰する宗教団体と深く関係していたことが引き金になったに過ぎない。別の政治家なり個人が深い関係にあれば、彼が狙われたということである。

また宗教を信じても、信じたおかげで裕福になれるなら、こんな犯罪は起きないだろう。他方、仮にアベノミクスがどんなに成功したとしても、財産を投げ打ち破産する家庭までを救うこともできなかっただろう。

学費軽減などの経済支援策とコミュニティー再生が急務

行政としては、孤独の問題を一人暮らしの高齢者の問題としてだけ捉えるのではなく、中年になった氷河期世代、さらに将来の中年予備軍である若者世代にも目を向けて、孤独を軽減する横断的な政策を立案すべきだ。

妙案はないものの、最も重要なのは学費の軽減などの経済支援であろう。無償化は無理でも半額にするなどの施策は、防衛費増強の予算を教育に振り向ければある程度可能である。学ぶ意欲と能力のある若者がそれに見合う教育を安価で受けられることは、安定した収入を確実にするために必須である。

写真=iStock.com/D76MasahiroIKEDA
※写真はイメージです

家庭に何らかの事情があって、それが間接的に犯罪を助長するケースも少なくないとすれば、現在の青少年については地域社会の中で彼らに居場所を確保するという対策が必要になるだろう。