社長自ら不正を指示していた小林化工
——小林化工と日医工の教訓はどう生かされていますか。
【田中】協会の取り組みとしては5項目を挙げています。
2、品質を最優先する体制の強化
3、安定確保への取り組み
4、積極的な情報の提供と開示
5、その他、協会活動の充実、国等との連携
です。なぜ1番目に、コンプライアンス、ガバナンス、リスクマネジメントを挙げたかというと小林化工、日医工ともに第三者委員会の調査報告書が出ましたが、読んでみると法令遵守に対する意識不足が目立ちます。小林化工は、社長自ら不正を指示していたので、会社全体のガバナンス体制とコンプライアンスの欠如の問題ともいえます。
それに対して日医工は、製造現場の責任者による不正の指示によるもので、現場のガバナンス体制の問題といえると思います。こういったところが明確になったので、一番の教訓は、やはりこの対策の強化だと思います。徹底的に業界団体として会員会社に取り組みのお願いをしています。
また内部通報制度の設置は、300人以内の会社は努力規定となっていますが、あえて設置を依頼しています。内部通報制度は抑止力になりますので。まだまだ取り組んでいる最中というのが実態です。ただ、単独の会社としてでは動きが遅くなりそうなことを、業界団体としてきちんとリードしたいと思っています。
(*3)健全な企業運営を行う上で必要な管理体制の構築や、企業の内部を統治すること。
失った信頼をどのようにして取り戻していくのか
——ジェネリック医薬品に対する信頼をどう取り戻すのでしょうか。
【田中】「ジェネリック医薬品があってよかった」と言っていただくことです。
国民の9割以上はジェネリック医薬品という名前はご存じのようですが、「安い」ということだけしか知っていただけていないようです。実は安いだけではありません。先発医薬品が独占販売期間に副作用等が出たとします。ジェネリック医薬品は、先発医薬品で安全性、有効性で問題ないものを選んで出しています。逆に言いますと、安全性は高いとも考えられるのです。
細かいところにも、いろいろ工夫をしています。例えば、大震災の教訓から、有用性が高まっている、水がなくても飲めたりして、口の中で溶けやすくする剤形です。そういう工夫は、年配者で飲み込む力が弱まる人にも大変役に立ちます。また、薬に製品名を印字することもあります。飲み間違いがないための工夫です。これもジェネリックメーカーが始めたものです。
患者様から薬のにおいがきつく嫌だという声があれば、コーティングを施すことで、においを軽減させる工夫もしています。マスキングといいます。実際には、他にも工夫をたくさんしています。単に先発医薬品と同じものというわけではありません。有効成分は一緒ではありますが、添加剤を変えることにより、形を小さくしたり、飲みやすくしたり、いろいろな工夫をしています。今回の問題により、ジェネリック医薬品に対する信頼を失墜させてしまい、多くの皆様にご迷惑をおかけしてしまいました。
引き続き、信頼回復に向けた取り組みを継続し、その取り組みの内容をしっかりと説明していきたいと思っています。