子供は褒められることで「聞く耳」を持つことができる
もしも子どもに弱点対策をひとつ立てさせたいと願うならば、子どものいい部分を少なくともふたつ、みっつ褒められるような準備をしてください。「わが子のいい部分が見つからない」ということは絶対にないと思います。
私の教育相談を例にするなら、成績はあまり冴えなくとも「始業時にテキストとノートを出すスピードがクラスで一番速い」子どもがいます。ほかにも「授業中によそ見をすることがない」「鉛筆が非常に速く動く」、これもそれぞれのいい部分です。
何も成績に限らず、その子どもが頑張っていることを見つければいいのです。毎日一緒に暮らしているご両親なら、ふたつ、みっつの褒めポイントはすぐに見つかるでしょう。そしてしっかり褒めるのです。
子どもは褒められたら元気になります。モチベーションもアップします。その状態になれば子どもに「聞く耳」ができ、弱点対策も素直に前向きに受け入れられるようになります。
玄関で「今日何点だった?」と聞くのは絶対にNG
子どもの「いい部分」を収集するには、日常生活で常に目を光らせるのではなく、わが子に対する観察眼を持つことが有効だと思いますが、昨今、仕事を持つお母さんもたくさんいらっしゃいますし、毎日とても忙しく、なかなか細かく子どもを気遣っていられない、というのも本音かもしれません。
長時間子どもを見ている必要はありませんが、ただ少なくとも「子どもは学校に行ったあとに塾まで行って頑張っている」ということを常に頭のどこかに置いておいてほしい。そして、できれば子どもが塾から帰宅したら「ああ、お帰り。よく頑張ったね」という一言をまずかけてあげてください。
よくあるのは、玄関で「今日は何点だった?」といきなり尋ねるお母さんです。そして「平均点は?」とたたみかける。子どもは長い1日が終わってやっと家にたどり着いたのに、「お帰り」もなく点数を尋ねられてはホッとする間もありません。親が子どもをこういうふうに評価していくと、多くの子どもはだんだん疲弊し、その日常に潰されてしまいます。
そして安全策をとるようになり、自分がある程度余力を持ちながらやれるところで学力が止まってしまうのです。浜学園を例に挙げると、自分がそこそこの努力で無理なく平均点をとれるクラスで満足してしまう。そうなってしまうと、せっかく貴重な時間を割いて塾に通っているのに、そのままの状態で、子どもは開花せずに終わってしまいます。
玄関で子どもに点数を尋ねるお母さんに悪気はないのかもしれません。子どもを心配し、四六時中それが気になって仕方がないから、無意識に口に出てしまうのでしょう。
しかし、疲れて帰ってきた子どもにとっては違います。「自分が悪くない成績をとっていたときは何の声もかけてこなかったのに、悪くなったらそればかり言われる」。
子どもは追い詰められていきます。そのうちに疲れ切って勉強に面白みを感じられなくなり、平均点をとれるクラスのど真ん中という安全なぬるま湯から出なくなるのです。
子どもは本来プラス思考です。周囲の大人はそのプラスの力をうまく生かさなければなりません。子どもがやる気を失いかけていたら褒めて励まし、子どもがやろうかなという気になったタイミングでうまく声かけをする。わが子の性格を一番知るのはお母さんやお父さんです。声かけひとつで、子どもの学力は急に変わるのです。