読み書き能力は受験英語で養うことができた

まず、一つ最初に述べておくと、現状の大学受験制度は非常に優れています。ペーパーテストで大人数に公平な立場から試験を課すことができる利点を取りつつ、最大限さまざまな角度から受験者の英語運用能力を試しています。

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しかし、そうした制度でも手が回らない分野は存在します。それこそが、スピーキング能力なのです。

受験者がどれだけ流暢に英語を話すことができるかを試すには、その試験が高度になればなるほどに、試験を課す側の負担が指数関数的に増加していきます。なぜならば、公平性を担保しつつ採点を行うとなれば、究極的には採点基準揺れを防ぐためにも、採点者はたった一人で全受験生との面接(もしくは面接ビデオ)に臨んで能力を確認する羽目になってしまうからです。全国で数十万人にも上るであろう受験者すべてのスピーキング能力をテストするのは現実的には不可能であると言わざるをえません。

ここまで見ると、まるで受験英語は役に立たないかのように見えるかもしれません。とはいえ、先ほど述べたことは、裏を返すのであれば、冒頭で述べた4技能のうちの3つはカバーできているということを表しています。

実際、専門家には遠く及ばないまでも、英語の読み書きの能力は受験英語を通して培うことができました。辞書さえあればなんとか英語の本やレポートでも読み進めることができますし、字幕などの補助があれば、なんとか洋画や海外ドラマなども吹き替えなしで視聴できます。

これは間違いなく受験勉強の中で英語の読み書き、そしてリスニング能力を鍛えたが故の恩恵であり、受験英語は英語力の向上に役に立たないなんてことは、全くありえないと僕は考えています。受験英語が役に立たないのではなく、大学以降の世界で要求される英語運用能力のレベルが急上昇していると考えるほうが適切でしょう。

というのも、大学に入学するまではリーディング、ライティング、リスニングの3能力が問われるにもかかわらず、大学入学以降の世界ではこれら3技能は当然としたうえで、スピーキング能力のレベルが大きく影響してくるためです。

大学のカリキュラムからは英語は避けて通れない

研究分野や内容にもよるのですが、例えば僕の学んでいる言語学などは、日本国内よりも海外の方が研究が大きく進んでいる分野として有名です。となると、教科書や資料の論文などはほとんどが海外のものを使うことになり、もちろん英語を避けて通ることはできません。

ここまでは大学で少しでも研究をしたことがある方なら「そんなの当たり前だろう」と思われるかもしれません。ですが、今の大学では僕ら言語学専攻のような英語をバリバリに使っていくような学生以外でも、英語の使用から逃げられないようなカリキュラムが組まれていることが非常に多いのです。