歴史的低金利が「富裕層」の背中を押す
不動産価格を押し上げている最大の要因は、「政策」です。
まず、何といっても、歴史的な「低金利」が、「多少高くても購入できる」環境をもたらしています。
いわゆる「アベノミクス」、つまり黒田総裁就任後の日銀による金融緩和政策が続く中、住宅ローンは圧倒的な低金利が続いています。
変動金利の場合、年率0.4%以下ということも珍しくありません。
そのため、月10万円程度の返済額でも、4000万円くらい借り入れることができます。
そのため、家賃と比べても住宅ローン返済額がかなりお得に見えると思います。
また、「住宅ローン控除」の影響も見逃せません。
住宅ローンを使って不動産を購入した場合、「年末における住宅ローン残高の0.7%」を、入居時から13年間、所得から控除することができます。
つまり、3000万円の住宅ローン残高がある場合、10年間で273万円が戻ってくるイメージです。
もちろん、実際には所得や課税額により控除額が変わるので、上記の単純計算よりも少なくなるケースがほとんどです。
ただ、それでも住宅ローン借入による利子の大部分が、この住宅ローン控除で相殺されるので、かなりお得な制度であるのは間違いありません。
不動産市場に起きている「2つの異変」
もっとも、それはあくまで新築マンションを購入できる人に限った話です。
いま日本の不動産市場に、そうした状況がもたらす「2つの異変」が起きています。
その異変とは、「中古住宅需要の高まり」と、「買い替え需要の減少」です。
これまで、日本の不動産市場では、圧倒的に新築が好まれていました。
中古住宅は、築年数が浅くても、大きく値下がりしてしまうのが当たり前でした。
しかし、昨今では、中古住宅の人気が高まってきています。
その背景には、消費者の嗜好が変わり、「何が何でも新築」ではなくなって、クオリティーの高い中古住宅に人気が集まりやすくなっている、という事情があります。
また、リフォームやリノベーションを扱う業者が増えたことや、2018年4月に宅地建物取引業法(宅建業法)が改正され、不動産インスペクションの説明が義務化されたことも影響しています。
ただ、それら以上に大きな影響を与える要素として、新築マンション価格が高騰し、中古住宅に割安感が出ていることも見逃せないでしょう。
その新築マンション価格の高騰は、「買い替え需要」にも大きな影響を与えています。
日本の不動産市場では、これまで、新築マンション需要の一定程度は「買い替え需要」が占めていました。
高齢に達し、子供も自立した夫婦が、メンテナンスに手がかかる一戸建てを売却し、より利便性の高いマンションに住み替える、というケースがかなりあったわけです。
しかし、昨今は「買い替え需要」が非常に弱くなっています。
コロナの影響もあって、狭いマンションより、広い持ち家のほうが好まれている、という問題もあると思います。
が、やはりここにも新築マンション価格高騰の影響が見て取れます。
「買い替え」では、築年数の経過した持ち家を手放し、その売却代金を充当することになりますが、新築マンション価格が高騰しているため、持ち家を売っても、欲しい物件が買えない、というケースが増えているのです。
とりわけシニア層は、その差額のためにローンを組むのも大変です。
そのため、「買い替え需要」が大きく低下しているものと考えられます。