「売れる」「貸せる」視点も必要

変化を嫌うどころか、自ら変化し続けるスタンスをとる――。村中さん夫妻のケースを自分に置きかえて考えてみると、一度買った我が家を売り、また別の場所に家族総出で引っ越す……どうしても腰が重くなりがちなところを、彼らはまったく厭わない。「幸せに生きるために変化し続けるのは当たり前じゃない?」という軽やかさに、目から鱗が落ちる思いでした。

変化の激しい“風の時代”の住居選びでは、マイホームを建てたり分譲マンションを買ったりしても、村中さんのようにフレキシブルに移動する心構えを持っておくことが、大きなヒントになりそうです。

また結婚のたとえで恐縮ですが、20代のときに「結婚したい」と思った人と、30代、40代で惹かれる人はだいぶ違うと思うんです。同じように住まいも、20代のときに思い描いていた理想の間取りと、50代のときに心地よく感じる間取りはまったく異なるのではないでしょうか。

そういった意味で今後の住宅購入は、「売れる」「貸せる」といった視点を持つことも必要かもしれません。小林さんの場合、ローンの組み方には問題ありですが、資産価値の高いタワマンは売れる可能性が高いので、移動は案外、簡単かもしれません。

ただその一方で、「自分の家は資産価値が高い」という思い込みにも注意が必要です。一時期、スカイツリービューが手に入るということで墨田区周辺の不動産価値が高騰しました。こういった家の場合、完成当初の人気が落ち着けば実力相応の価格に戻るため、高値で売ることは難しくなることがあります。

写真=iStock.com/fannrei
※写真はイメージです

ローンを組む前に第三者に見てもらうといい

小林さんほど「詰んだ」ローンを組む人は稀ですが、マイホームの購入を考えている方は一度、関係者以外のファイナンシャル・プランナー(FP)に相談されることをおすすめします。FPのいいところは、さまざまな事例を持っていること。同じくらいの年収で家を買ったAさんの場合、Bさんの場合……という風に、類似例をサンプルとしてお話ししながら、無理のないローンの組み方をお伝えできると思います。

そして、夢の住まいを手に入れたのに、お小遣いは2.5万円と大幅減になってしまった小林さん。老後資金を貯める余裕などもちろんなく、食費もレジャー費もあらゆる費目を小さく小さく、ミニマムにせざるを得ない状況のため、不満が溜まっていると言います。ただ、今のタワマンを維持しながら、お子さんの教育にも今後お金を使いたいという希望もあったので、私からはまず、妻のフルタイムでの職場復帰をおすすめしました。それが難しければ、家の買い替えをして生活ランクを下げることになりそうです。

繰り返しになってしまいますが、マイホームのご購入時は、ローンを組む“前”にFPに相談していただけたらと思います。購入してしまった後でできるご相談は、削れるところのチェックと、努力で増やせることをお伝えしてモチベーションを上げることくらいになってしまいます。

(聞き手・構成=小泉なつみ)
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