競合他社より一歩先の情報を獲得する方法

今回、遺族からの情報提供を独占したNHKが記者クラブから追放されてしまったように、記者クラブ内では情報は平等に配られる。しかし、それではマスコミ報道は「官報」と変わらない「横並び」になってしまう。そこで記者クラブで得た情報をベースに取材合戦がスタートする。

具体的には、朝や夜に官舎に通いつめて、官僚と仲良しになって「自社だけの特ダネ」を頂戴するのだ。だから、記者は夜中であっても情報を持つ役人から呼び出されると急いで駆けつける。つまり、日本のマスコミは、「情報を握っている役人」から特ダネを恵んでもらう「下請け」のような弱い立場なのだ。

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もちろん、ジャーナリストが情報提供者に対して弱い立場になることはある。彼らの協力がなければ調査報道はできない。インサイダーがいてはじめて、組織の不正などが明らかになるのだ。

ただ、「記者クラブ」の場合は、そのようなジャーナリストの弱い立場をさらに弱くさせて、「下請け業者」レベルに貶めてしまうのだ。限られたマスコミしか入れない閉鎖的なムラ社会が何十年も続いてきたせいで、「情報提供者とジャーナリスト」という個人のギブアンドテイクな関係ではなく、「役所とそこに出入りする業者」という組織人と組織人の関係になってしまうのだ。

役人が女性記者にやりたい放題するワケ

それを象徴するのが、テレビ朝日の女性記者が、財務事務次官に夜中たびたび呼びつけられてセクハラ被害にあっていた事実だ。今は時代的にアウトだが20年くらい前はこの手のセクハラは日常茶飯事だった。

例えば、2003年には大阪府警の副署長が女性記者と飲んだ後、「遅いからホテルに1人で泊まったら」とビジネスホテルへと連れていき、肩を抱き寄せたり、抱きついたりした、として懲戒処分を受けた。07年には、長崎市の企画部長が、女性記者をホテルに連れていって性的関係を強要するというセクハラ疑惑も報道された。

なぜ昔から役人はこんなやりたい放題なのかというと、クラブ記者よりも自分たちの方が圧倒的に強い立場にあると思っているからだ。筆者と交流のある官僚の多くは無意識に「マスコミに書かせる」とか「ネタをやった」という言い方をする。無意識だが、自分たちの情報がなければ何もできないと「下」に見ているのだ。

実際、官僚は好き勝手にマスコミを操ることができる。こちらの思うような報道にならない場合、「今度から他社に持っていきますね」と袖にすることができる。これが記者は最も恐れる事態だ。自分の「社内評価」を落とすことにもなるからだ。